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表題目次3.13.23.3.13.3.23.3.33.4.13.4.23.4.33.5

3.4 結果と考察 3.4.1 各フラックスの観測結果およびモデルによる再現計算結果 1994/5/23、7/13、8/6、10/4、12/22、1996/11/12、11/13、1997/2/18、2/20、5/23の10回にわたって集中観測が行われた。全天日射量、気温、水蒸気圧、大気CO2濃度、風速の測定値の変化を図-3.5に示す。また、運動量フラックス(u*2)、顕熱フラックス、潜熱フラックス、CO2フラックスの測定値の変化を図-3.6に示す。ただし、渦相関法によって算出された森林樹冠上の顕熱および潜熱フラックスは、主に移流熱輸送の影響によって、過小に見積もられることがしばしば報告されている(山野井・大谷, 1992; Tanaka et al., 1994; Laubach et al., 1994)。本観測においても、これらと同様に過小と考えられるフラックスが算出された。風上側に一定の吹走距離(fetch)を持つ地点における移流熱輸送の影響は、測定高度とともに変化し(Schmid and Oke, 1990)、樹冠面直上でゼロとなる。本研究では、高度によらずボーエン比が一定であると仮定し、次式による補正を施した。 (3.31) (3.32) ここで、H'およびlE'は、補正後の顕熱および潜熱フラックスである。以下では、補正後の値をそれぞれHおよびlEとして用いることとする。 集中観測は、無降雨の晴天日を選んで行われ、日中の全天日射量は、太陽高度に伴って、滑らかなサインカーブを描いた。また、気温は、0.5℃(1997/2/22 17:30)から、35.5℃(1994/8/6 15:15)と、広い範囲にわたって変化した。それにともない、水蒸気圧の変化範囲も広く、ほぼ全季節に渡って集中観測が行われたと考えられる。風速と運動量フラックスは、非常に相関がつよく、1996/11/12および、11/13においては、風速が4 m s-1程度と比較的強風の条件であったが、その他の期間については、1 m s-1程度と本対象地域における平均的な値の範囲であった。顕熱フラックスおよび潜熱フラックスは、ほぼ日射量と同様の日変化を示た。CO2フラックスは、概して、日中に下向き、夜間に上向きのフラックスが見られたが、1994/7/13、8/6には、正午付近で上向きフラックスが見られた。すなわち、夏期の十分な光環境下であっても、高温と乾燥によって光合成が抑制され、呼吸によるCO2放出が増大すると考えられ、その結果、純光合成速度がマイナスになったものと考えられる。 図-3.5 観測された日射量、純放射量、気温、水蒸気圧、大気CO2濃度、風速の変化 Change in observed solar radiation, net radiation, air temperature, vapor pressure, atmospheric CO2 concentration and wind speed 図-3.6 観測された運動量フラックス(u*2)、顕熱フラックス、潜熱フラックス、CO2フラックスの変化 Change in observed momentum flux(u*2), sensible heat flux, latent heat flux and CO2 flux 観測された値を用いて、まず、計算されるH2Oフラックスと観測値との残差平方和が最小となるように、群落抵抗モデル中のパラメータを決定し、次に、計算されるCO2フラックスと観測値との残差平方和が最小となるように、光合成サブモデル中のパラメータを決定した。ただし、本対象林は常緑針葉樹林であるため、葉面積の変動などにともなう森林における光合成・蒸散速度の環境応答特性に季節変化がないものと仮定し、モデル中のパラメータは年間を通じて一定とした。また後述するように、本対象森林群落においては、(3.15)式の群落抵抗と仮想葉温度の関係を示す関数gを適用せず、仮想葉温度の変化はRcに影響を及ぼさないものとして、g(T)=1とした。また、Raの算出には(3.11)、(3.12)式を用いず、下記で示すように運動量フラックスと風速の観測値から(3.5)式を用いて算出した。表-3.3に、決定されたモデルパラメータを示す。 空気力学抵抗(Ra)、仮想葉温度(T)、群落抵抗(Rc)、仮想葉内部CO2濃度(Cc)は、図-3.5および図-3.6に示された観測値から、(3.5)~(3.8)式を変形した以下の式を用いて算出される。 (3.33) (3.34) (3.35) (3.36) Parameter Value Rcmin 62.77 a 0.00002157 Tx - To - Tn - b 0.02639 r 0.1256 Rd25 0.1247 e(1-f) 0.2443 表-3.3 桐生水文試験地ヒノキ林において見積もられたパラメータ Estimated parameters in Kiryu Exp. Forest このようにして算出された群落抵抗(Rc)と、光合成有効放射量(Q)、仮想葉温度(T)、飽差(D)との関係を図-3.7a1,2,b,cにプロットする(◆)。ただし、縦軸は最小群落抵抗(Rcmin)の群落抵抗(Rc)に対する比(Rcmin/Rc)である。また同時に、算出される潜熱フラックスと観測された潜熱フラックスとの残差平方和が最小となるように、非線形回帰分析により決定した(3.14)、(3.15)、(3.16)式の関数f、g、hの曲線を図-3.7a1,2,b,cに描いた(実線)。ただし、後述するように仮想葉の温度の変化による群落抵抗の変化が見られないため、関数gについては、g(T)=1とした。光合成有効放射量(Q, mmol m-2 s-1)および飽差(D, hPa)は、それぞれ、全天日射量(S, W m-2)および、仮想葉温度(T, ℃)と大気水蒸気圧(ea, hPa)の観測値から、次式をもちいて計算した。 (3.37) (3.38) (3.38)式は晴天日の全天日射量(W m-2)とPAR(mmol m-2 s-1)の平均的な関係(McCree, 1972; Jones, 1992)より導いた近似式である。 図-3.7 群落抵抗(Rc)と、光合成有効放射(Q)、仮想葉温度(T)、飽差(D)の関係(a1,2: Rc-Q, b: Rc-T, c: Rc-D) Relationships between canopy resistance(Rc) and PAR(Q), canopy temperature(T) and vapor pressure deficit(D), (a1,2: Rc-Q, b: Rc-T, c: Rc-D) 関数、f、g、hは、群落抵抗を大きくする要素が、それぞれ、光合成有効放射量(PAR)、仮想葉温度、飽差のみであった場合のRcmin/Rcをあらわし、0〜1の値をとる。実際の環境では、他の制限要因が影響するため、実際のRcmin/Rcは、それぞれの関数の曲線よりも下側にプロットされる。 図-3.7a1,2では、高PAR下において、実際のRcmin/Rcが、関数fを大きく下回っている。高PAR下すなわち、日射が大きい時には、樹冠の温度が上昇するため、仮想葉の温度が上昇する影響か、または、それによる飽差上昇の影響によって、Rcmin/Rcの低下(Rcの上昇)がおこるものと考えられる。 図-3.7bでは、実際のRcmin/Rcからは最適温度が不明瞭である。このことから、温度条件以外の光および水分条件により大きく制限されていることが推察される。また、観測値を用いた非線型回帰分析によって最適化された(3.15)式に示した関数gに関するパラメータは、Tn=-801、To=-541、Tx=1237となり、-10


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田中広樹