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表題目次3.13.23.3.13.3.23.3.33.4.13.4.23.4.33.5

3.3 モデルの概要 3.3.1 各フラックスの基礎式 図-3.3電気回路アナログモデル Concept of analog model 森林群落を大きな一枚の葉(以下では、仮想葉と呼ぶ)とみなし、仮想葉と大気との間の運動量、顕熱、潜熱、CO2の交換について考える。基本的に大気−植物間のそれぞれのフラックスの決定要因はそれぞれの物理量勾配と拡散係数であるが、これを便宜上電気回路のアナログモデルで表すことがよく行われている(図-3.3)。この場合、概念としては、抵抗の逆数が拡散係数に相当する。森林群落においては、群落の物理的形状によって決定される空気力学的抵抗(Ra)と、植物の生理的な活動によって決定される群落抵抗(Rc)と呼ばれるものに分けられる。森林群落の空気力学的抵抗は主に群落の粗度長と風速に支配され、風速以外の環境条件の変化による変動は少ない。一方、群落抵抗は、個葉における気孔抵抗に相当し、植物の生理的な活動による気孔開閉の度合いによって決まる。したがって、群落抵抗は、環境条件の変動による植物の応答に支配され、環境条件によって動的に変化する。 運動量フラックスは下向きを正、その他のフラックスは上向きを正とすると、各フラックスは、それぞれの物理量の仮想葉内部と大気中との差(すなわち、風速差、温度差、H2OおよびCO2濃度差)および、それぞれの交換経路における抵抗をもちいて次式のように表される。 (3.5) (3.6) (3.7) (3.8) ここで、Uは風速(m s-1)、Raは空気力学的抵抗(s m-1)、Tは仮想葉の温度(℃)、Taは気温(℃)、lは水の気化潜熱(J g-1)、es(T)は温度Tにおける飽和水蒸気圧(hPa)、eaは大気の水蒸気圧(hPa)、gは乾湿計定数(hPa ℃-1)、Rcは群落抵抗(s m-1)、Ccは仮想葉内部CO2濃度(mmol mol-1)、Caは大気CO2濃度(mmol mol-1)である。(3.5)式においては、仮想葉内の風速を0と仮定している。また、(3.8)式においては、蒸散による気孔での対流の影響を考慮している(Jaman, 1974; von Caemmerer and Farquhar, 1981)。仮想葉内部CO2濃度(Cc)は、仮想葉上に仮定された気孔内におけるCO2濃度を意味し、群落を構成する個々の葉における気孔内のCO2濃度の代表値であると考える。 また、仮想葉が受け取る純放射量は、次式のように表される。 (3.9) ここで、Rnは純放射量(W m-2)、DSは貯熱変化量(W m-2)、Pは光合成に使われるエネルギー(W m-2)である。一般に森林の場合、貯熱変化量(DS)および光合成エネルギー(P)は、他の2項に比べて微少である(塚本, 1992; 中村ら, 1993)。したがって、本モデルでは次式の近似を用いる。 (3.10) (3.5)式中の風速(U)はフラックス測定高度における平均風速であり、風速の鉛直プロファイルにおける対数則が成り立つと仮定すると次式のように表される。 (3.11) (3.12) ここで、u*は摩擦速度(m s-1)、kはカルマン定数、zは測定高度(m)、dは地面修正量(m)、z0は粗度長(m)である。ただし、測定高度は20.5mであり、地面修正量および、粗度長は、別に行われた風速の鉛直プロファイルの観測より、それぞれ16.0m、0.7mと見積もった。したがって、風速(U)を与えることにより、空気力学的抵抗(Ra)は、(3.5)、(3.11)、(3.12)式を用いて算出される。 群落抵抗(Rc)を後述する群落抵抗サブモデルより算定すると、風速(U)より算出した空気力学的抵抗(Ra)および、(3.6)、(3.7)、(3.10)式を用いて、気温(Ta)、大気の水蒸気圧(ea)、純放射量(Rn)を与えることによって、仮想葉温度(T)が算出される。また、同時に、顕熱フラックス(H)および、潜熱フラックス(lE)が算出される。 一方、CO2フラックス(Fc)の算出には、それらとは別に大気圧(P)、大気CO2濃度(Ca)および、仮想葉内CO2濃度(Cc)が必要となる。大気圧(P)および、大気CO2濃度(Ca)は、観測値等を与えるものとし、仮想葉内CO2濃度(Cc)および、CO2フラックス(Fc)は、(3.8)式と後述の光合成サブモデルを連立することによって算出される。


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田中広樹