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表題目次2.12.22.3.12.3.22.4.12.4.22.4.32.4.42.5.12.5.22.6

2.6 まとめ

九連山の小流域において、降水量、流出、その他の水文・気象要素の観測が行われ、流出特性がHYCYMODELを用いて解析された。

観測の結果、降雨に対する流出率は、約50%であることが分かった。また、ポテンシャル蒸散量は、3月の22 mm month-1から7月の73 mm month-1まで変化すると見積もられた。

HYCYMODELによって、比較的小さい相対誤差で九連山の降雨−流出応答の再現計算が出来た。 試行錯誤によって決定されたHYCYMODELのパラメータから、九連山流域では、不透水帯の面積が小さいこと、そして、大きな貯留能を持つことが示された。

水収支の成分、すなわち、基底流出、直接流出、蒸発、蒸散がHYCYMODELを用いて、算出された。年降水量に対する年蒸発散量の割合は、降雨の少ない年に著しく大きいが、年蒸発散量は、年格差がもっとも小さい。年間の全直接流出は、基底流出および、蒸発散量と比較して、非常に大きく変化する。

九連山とその他の国内流域におけるハイドログラフおよび水収支成分の比較をHYCYMODELを用いて行った。九連山流域では、ピーク流出が小さく、逓減ハイドログラフが緩やかであることが示された。九連山においては、降水に占める蒸発散量の割合が大きく、全流出に占める基底流出の割合が小さい。

積算降雨と積算直接流出の関係と、逓減曲線が一定の降雨条件下において、計算された。九連山における積算直接流出は、風化花崗岩を基岩とする国内流域よりも小さく、古生層堆積岩を基岩とする国内流域および、火山地域の国内流域におけるものに類似する。九連山において計算された逓減ハイドログラフは、火山地域におけるものに類似し、そのたの国内流域と比較して緩やかである。

本章の結果として、全流出に占める基底流出の割合が類似するにもかかわらず、九連山流域におけるハイドログラフの形状が国内流域によるものと異なることが示された。すなわち、九連山においては、ピーク流出が小さく、逓減ハイドログラフが緩やかであることが分かった。このようにモデルを用いて、降雨−流出応答における特性が数値的に明らかになり、土壌−渓流間におけるH2O移動過程について、測定不可能である成分毎の流出量が計算できた。

本章において、日射量、気温、大気水蒸気圧の月平均値を用いて、月当たりのポテンシャル蒸散量を算出し、HYCYMODELへの入力とした。HYCYMODEL中では、表層土層を表現するタンクの貯留量に応じて蒸散抑制が起こるものとして、月当たりのポテンシャル蒸散量から、1時間当たりの蒸散速度を計算した。そのため、蒸散速度の日変化は考慮されなかった。しかしながら、刻々と動的に変化する気象条件によって、森林における実際の蒸散速度は大きく変動する。太陽から放射エネルギーの形で森林に入射するエネルギーは、その大部分が大気を暖めるのに使われるか、蒸発散に使われる。したがって、太陽高度の変化に伴って、蒸発散速度は変化する。また、蒸散は植物の生理的な活動によるものであるため、日射量、気温、湿度など環境条件の変化によって変化する。これらのことは、本章では考慮されなかった。森林におけるH2Oの移動過程をより詳細に明らかにするためには、刻々と変化する気象条件への蒸散速度の応答関係を明らかにする必要がある。この点については次章において取り扱う。


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田中広樹