4.4 まとめ
シベリアタイガ・カラマツ林群落において、森林群落と大気のCO2およびH2O交換過程に関する特性、すなわち、群落の光合成・蒸発散特性の変化を明らかにするため、森林群落樹冠上でのCO2およびH2Oフラックスの観測を連続観測を行った。観測期間は、1997年8月16日から8月30日までの15日間と、1998年5月15日から7月23日までの70日間の計85日間であった。群落全体としての光合成・蒸発散特性の季節的な変化を定量的に明らかにするため、第3章で示した数値モデルを用いて観測結果の解析を行った。
観測の結果、H2Oフラックスは、5月に非常に小さく5月末から6月の上旬に増大した。また、1997年の8月には比較的小さな値となった。 CO2フラックスは、潜熱フラックスと同様、5月にはほとんどゼロか、わずかに上向きであったが、5月末から6月の上旬に下向きフラックスが増大し、夏期には、-0.5 mg m-2 s-1と大きな下向きフラックスが見られた。またCO2とH2Oの収支はそれぞれ、5/15-7/23の70日間では、-5.5 tCO2 ha-1(-1.5 tC ha-1)、116 mmであり、8/16-8/30の15日間では、-0.55 tCO2 ha-1(-0.15 tC ha-1)、9 mmであった。また、観測値のない7/24から8/15の期間について、7/19-7/23と8/16-8/21の平均値を内挿し、5/15-8/30の108日間について、同様に収支を算出ところ、-7.6 tCO2 ha-1(-2.1 tC ha-1)、153 mmとなった。
次に、1998年における開葉完了後の夏期の観測データを用いてモデル中のパラメータを決定し、モデルによるCO2およびH2Oフラックス計算を行った。見積もられたパラメータを用いて、春期および秋期におけるフラックスを計算したところ、観測値との間に相違が見られ、光合成・蒸散速度の環境応答特性が季節変化することが確認された。
光合成・蒸散特性の季節変化をより詳細に明らかにするため、観測が行われた全期間を10区間に分けて、区間ごとにRcmin、r、e(1-f)の最適値を算出した。最適化されたパラメータの季節変化は、森林群落の光合成・蒸散特性の季節変化を数値的に表現しているものと考えられた。6月上旬における3つのパラメータの急激な変化は、開葉によると考えられた。また、開葉完了後、成熟するまでの期間は14日程度と見積もられた。また、7月中旬以降の葉の老化によると思われる活性の低下が見られた。