| 質問 | 回答 |
| 最後の乱流フラックスを測る方法はよく分からなかった。 | 次回、復習(補足)します。 |
| 渦相関法によるフラックス算出の例について、もっと説明できたらよい | 次回、復習(補足)します。 |
| 現在、観測の現場で最も多く使われている温度計の種類は何か? | 自動計測としては、電気式温度計。おそらく安価なのでサミスタ。安定性では白金抵抗体。電源を考えると、乾電池で動くバイメタルと巻紙の記録計もまだ活躍しているかもしれません。 |
| 運動量の輸送という表現が分からなかった。 | 地表面は摩擦で、大気の運動量を吸収していると考えることができます。風速の鉛直勾配が何によって生じるかを考えることがヒントになるでしょう |
| 広葉樹と針葉樹では、どの程度、短波反射の量が違いますか? | 樹種や葉の状態にもよるので一概には言えない。森林植生の有無の違いに比べれば、あまり変わらないとも言える。 |
| 観測事実が予想と反していたり、統一性がなかったりするために、データをまとめたり、解釈するのが難しくなったことはありますか? | 予想と反することは、新しい研究テーマになる。いかに解釈するかが研究。 |
| 観測データの誤差が問題になることはありますか? | 誤差の見積り自体が研究テーマとなりうる。誤差の小さなもの(相対的な変化など)で議論する場合もある。 |
| 植物の日射反射は、植物の成長と関係はあるのですか? | 関係があります。 |
| 広葉樹と針葉樹の成長では針葉樹の方が早い。しかし、シベリアのタイガの生長期は年間1/3しかないのに成長が早いのか?土壌との関係があるか? | 一概に針葉樹が成長が早いとは言えない。シベリアのカラマツは、日本国内の広葉樹に比べれば、比較的成長が遅いと思われる。土壌も関係しうるが、気温などの気象要素の寄与が大きいと思われる。(成長と生長の使い分けに注意) |
| 風通乾湿球温度計の精度はどれくらいですか? | -20〜50℃の範囲では0.2℃(気象庁検定基準) |
| 鉛直風速が+の時、水平風速が弱いのはなぜか? | 運動量が下向きに輸送されているため |
| つまる所、物量と思いますが、その為の資金集めに対して、どのようなアプローチをしているのか知りたいと思います。きれい事だけでは、出資は期待できないのでは? | 資金は必要だが、必ずしも物量で勝負という訳ではない。どのような観測をするかのアイディアが重要と思う。学術研究としての新規性と重要性を説明することが重要であろう。 |
| 誤差についてはどのように対応しているか? | 誤差の影響のない範囲で議論するのが基本。測る目的を意識して、機器を選択する。 |
| クレーンで測る高さはどのように決めているのか? | 紹介した写真のクレーンは機器のメンテナンスのために使い、観測には鉄製のマストを用いている。高さは、海上での過去の研究例を参照し10mとした。高さの決定は、取扱可能なマスト・タワーの全長にも依存するが、周辺の地形、土地利用、接地境界層の厚さなどを考慮して決める。 |
| 通風乾湿球温度計での測定ではヒューマンエラーの影響が大きそうだと感じたが、他の計測機器の誤差はどの程度なのでしょうか? | 通風乾湿温度計は、熟練した者が測定すれば、人為的な誤差はそれ程ないようだ。誤差は計測器毎にあり、観測研究は、誤差が影響しない範囲での議論となる。測る目的に応じた測器が必要となる。 |
| 熱フラックスの計測法について、いま、主流となっているのは、直接測定なのでしょうか? | 主流は、直接測定(渦相関法)だと思いますが、その他の計測法も用いられています。海洋などではバルク法が主流かもしれません。 |
| 傾度法による計算で、フラックスを測るとき、測る高度によって違いはでないのでしょうか? | 物理量の鉛直勾配を差分で見積もる場合には、高度(差)の影響が大きいと思われます。微分値をもちいれば、原理的には測定高度は関係ないはずです。ただし、傾度法は、観測上の問題(上ほど勾配が小さい、下ほど地表面の水平不均一の影響が強い)から、正確なフラックスを導くのは困難となる場合が多いです。 |
| 拡散係数を求める場合の風速は鉛直流成分のみでしょうか? | 平均的な水平風速の鉛直分布から見積もる場合が多いと思います。鉛直風速は平均的にはゼロになるべきで、以前は測定が困難でした。 |
| 観測機器を整備するにはとてもお金がかかると思いますが、モデル予測の一人歩きを止めるだけの観測データを集めることは予算的にできますか? | 観測機器は高価なものが多いのは事実。モデル予測を止める必要はなく、両輪となって進めるべき。全てを測る必要はなく、測った事柄の一般化が重要。何をどう測るか?アイディアと工夫次第でお金が少なくとも観測研究はできると思います。 |
| 森林での観測機器の電源はどうしているのですか? | 商用電源(通常の電線から供給)、太陽電池、発動発電機、蓄電池などを用いる。併用する場合も多い。 |
| 電気式温度計に進化したが、通風温湿度で連続的に測定できるでしょうか? | 電気式の通風温湿度計も存在する。検知部は白金抵抗体を用いる場合が多い。こまめな水の補充と、ガーゼの交換が必要なため、湿度計としては、静電容量式のものを使う場合が多い。 |
| シベリア・カラマツ林の1998年6月19日のデータをもっと詳しく聞きたい。鉛直風速が−、CO2が+、H2Oが−となるのはなぜ? | CO2が下向きに、H2Oが上向きに輸送されているため。 |
| シベリアなどの環境のきびしい所での観測において、気をくばるような事はあるか? | 低温対策が重要だった。冬季には記憶装置は白熱灯で暖めた。放射計などは送風することで着雪を防いだ。 |
| 観測において信用できるデータと誤差の区別はどのように行うのか? | 誤差の影響のない範囲で議論するのが基本。通常、取り扱う範囲では誤差が影響しないような観測を行う。 |
| どのくらいの期間測定することで信用するデータを得ることができるのでしょうか? | 自然現象は刻々と変化する不可逆的現象である場合が多く、サンプリング数が問題となる事象は議論できない場合がある。日変化、年間の季節変化、年々の変化など、どのような現象を何回ぐらい含むべきかなどの目的に応じて、観測期間を設定する。 |
| 東シベリアは夏には25度くらいの気温になっているが、凍土はとけないのでしょうか? | 夏の気温は30℃を超える場合がある。最下段が土壌温度のグラフで表面〜深度120センチが図示されている。夏の間は、表層120センチ程度まではとけるが、120センチ以上の深度がとけることはまれ。 |
| シベリア・タイガ・カラマツ林では鉛直風速が正ならCO2は下がっていますが、都市部では、この関係はどうなるか? | CO2を放出しているので、逆の関係になると思われるが、都市部では水平不均一性の影響が大きく、測定が困難な場合が多い。 |
| 後半のフラックスの部分が理解しきれていないので、詳しく聞きたかったです。 | 次回、復習(補足)します。 |
| 観測は毎年行っているのでしょうか? | これまでは(大学院生〜研究員時代)は毎年行っていました。昨年からは観測を行わず、データ解析のフェーズに入っているつもりです。 |
| なぜロシア(中国)を観測しようと思ったのですか? | 非常に平坦、かつ、水平均質な場として、シベリア・タイガ林でフラックス観測をしたかった。森林サイトとしては、理想的な条件と思っている。中国は、地表面状態が劇的に変化する場として、地表−大気の相互作用を理解する上で理想的であると考えた。どちらも観測も大きな観測プロジェクトがあり、タイミングが良かった。一期一会の運も重要だと思う。 |
| 観測が力を発揮するのは見たい現象に対して、十分な量のデータがとれる時である。地図の範囲では2地点のみでしたが、どのくらいの現象に対して、どのくらいのサイトを作ったのかが知りたい。 | シベリアの地図の範囲では2地点、5サイトです。広範囲をカバーするのは、地点観測の役割からは少しずれると思います。地点観測では、そこで得られたものをいかに一般化・普遍化するかが重要です。サイト数を増やしても、観測値そのものの領域代表性は保証されないと思います。見たい現象にもよると思います。 |
| 観測施設の立ち上げや測定機械の設置にどのくらいの滞在期間が必要ですか? | タワー観測1セットであれば、タワー建設を除けば、数日で設置可能と思います。システム設計、見積り、発注、事前テスト、輸送の手配など、事前の作業の方が手間がかかり、数ヶ月以上かかるでしょう。特にロシア・中国へは、輸送に時間と費用がかかります。実際には、現地では動作のチェックの他、植生調査、土壌調査、天気概要の記録など、人力を要する作業のために滞在します。 |
| いろんな観測機器についてもう少し詳しく聞いてみたい(温度が低いので、測定しずらい状態量もあると予想できる) | 観測機器については、(鵜呑みにしないように注意が必要ですが)WEBを検索するといろいろと解説が見つかります。温度が極端に低い場合、そもそも飽和水蒸気圧がゼロに近づくので、相対湿度計が何を捉えているのか解釈が難しいです。 |
| 現在のモデルは観測結果とどの程度合っているのか? | 全球モデルも、それなりには合うようです。合わせようとすれば、いかようにも合わせられるところが問題なようです。観測結果と合うから良しとするのも問題だと思います。内包するメカニズム(式、パラメタ)の正確さが重要であると思います。 |
| 観測目的を考えながら、測器の設置方法・場所を決定するとのことだが、実際に得られたデータと観測する前に考えていたこととのギャップはあるか?具体例を教えてください。 | シベリア・タイガでは、樹冠上の温度勾配を測定しようと思い、タワー上端の他、樹冠面直上付近に温度計を設置した。なるべく勾配が出るようにと下の温度計を低めに設置したが、近傍の樹冠の影響が強く現れてしまった。樹冠内の温度として、扱うことにした。 |
| シベリア・タイガと永久凍土の共存関係のメカニズムは、はっきりと解明されていないのか? | はっきりと解明されているとは言えないと思いますが、タイガがあるから、凍土の融解深が120センチ程度と比較的浅く維持されていると言えるでしょう。森林でない場所では、200センチ程度までとけるようです。渇水の年に凍土の水を森林が利用しているようだという証拠も見つかっていますが、どのように凍土中の水分が移動するのかは明らかではありません。 |
| 気候モデルにおいて、上空はどこまで海はどのくらいの深さまでモデルに組み込んでいるのか? | モデルによってそれぞれと思いますが、紹介したものは、大気56層、海洋48層のようで、これが世界最高水準だそうです。大気の上端は40km?1hPaぐらい、成層圏界面ぐらいのようです。詳細はモデル研究者へ |
| 冬の間では水をどうやって手に入れているのか? | シベリア・カラマツ林は、冬期には水を手に入れることができないと思います。人間は氷を溶かして飲みます。あるいは、凍らない地下水を使うこともできるようです。 |
| 凍土の下側では乾燥していましたが、氷もあるとのことで、なぜそんなにバラツキがあるのか? | 融解した部分は、蒸発や蒸散により乾燥化します。過去の湿潤な年には深くまで融解し、深い位置に水分が閉じ込められたものと想像されます。なお、凍結した土壌では、ほとんど透水性がありません。 |
| 大気−地表間の熱輸送の測定で、世界各地で多くの観測を行うと思うが、他の研究者がこのような測定を行う際に、測定器の精度やその方法は共通する手法(基準)があるのでしょうか? | 使った測定器については、メーカー・機種名の明示し、機器の設計精度は明らかにします。乱流フラックスの算出については、ほぼ共通した手法があります。細かな補正法などは、日進月歩で進化しているところでもあります。それぞれ文献を引用し、前例に倣う場合が多いと思います。 |
| 観測法を個別に細分化して説明することで、それぞれの理解はすることができた反面、研究の中での観測の重要性という点がわかり難かった。温度計等の使用方法を教えたかったのだろうか? | 講義には流れがあり、説明は順を追ってすべきものです。今回は観測研究の雰囲気を伝えたいという意図から、温度計の使い方も解説しました。 |
| たくさんある観測方法の中で、温度計、放射計、拡散係数の導出、乱流、などをピックアップした理由はなんだったのでしょうか? | 大気と地表の相互作用において、温度に代表される状態量、放射計で測定する放射エネルギーの交換、乱流拡散で輸送される熱や水蒸気が重要な役割を果たします。それらを観測し、それぞれの関係を明らかにするのが、本講義でいうところの「大気−地表相互作用の観測」であるというつもりで、それらの解説の一貫として、取り上げました。次回は、これらを基礎に話を進めたいと考えています。 |
| 気候モデルの中身がどういうシステムになっているのかに大変興味がある。地球規模の複雑な自然現象を一体どのようにして計算しているのかが知りたい。そして、モデルがどの程度不確実性を持っているのかを知りたい | どういうシステムでどのように計算というのは、数行では回答不能です。詳しくは、気候モデルを取り扱った教科書をご覧下さい。 |
| フラックスタワーで観測を行った値はどの程度の範囲を代表しているのでしょうか? | 大気安定度、粗度にもより、範囲(フットプリント、フェッチ=吹走距離)が変化すると考えられています。乱流観測に必要なフェッチとしては、議論のあるところですが、風上側に高さの10倍以上(あるいは100倍程度)というのが目安でしょうか。 |
| フラックスタワーはどのような所にどのくらいの数があるのでしょうか? | 国内では湿地、水田、草地、森林などに26サイト(AsiaFlux登録サイト)、海外(アジア域)ではAsiaFlux登録サイトが17サイトあります。その他、アメリカAmeriFluxやヨーロッパEUROFLUXを中心に数多くのサイトがあります。 |
| シベリア・タイガの森林はどうやって成立するのか? | そこにある環境に適応して、なんとか生きているのだろうと思います。 |
| モデル計算結果と観測事実が合わない場合は、どう解決しますか? | モデルのどこが合わないのかをモデル内部の変数の挙動などを追いかけつつ考えます。観測結果がどうであったら合うのか?どうだから合わないのか?直接的な理由が分かれば、モデル側の問題なのか、観測側の問題なのかの切り分けが出来てきます。 |
| 輸送速度の測り方で、傾度法、ボーエン比熱収支法、渦相関法の3つが挙げられていました。現在最もよく利用されている方法は何ですか? | 主流は、直接測定(渦相関法)だと思いますが、その他の計測法も用いられています。海洋などではバルク法が主流かもしれません。 |
| 地球学には人間活動が含まれていないのですか? | 概念としては含まれるべきと思います。「数値モデルを用いた予測(天気予報)→農業スケジュールの決定→地表状態の変化→気象・気候の変化」とまで考えれば、我々の研究活動「地球学」そのものまで含むかもしれません。ただし、現在の講師の陣容(いわゆる理系が多い)では、いわゆる人間活動の影響(社会学系?)にまで深く踏み込む講義は構成しにくいだろうと思います。来年以降の構成は分かりませんが。 |
| フラックスの3つの測定法は、それぞれどの程度の精度で測れますか? | 基本的には、観測機器の精度を重ねていけば、精度は計算できると思いますが、自然条件下での観測で水平均一がどの程度成り立っているかに関わる精度については、一概にどのくらいとは言えません。 |
| 観測機器にも誤差は出てくると思いますが、どの程度の誤差がありますか? | 超音波風速計(GILL R3-50の場合):風速範囲0-65m/s、分解能0.01m/s、精度<±2%RMSだそうです。多くの測器は「気象庁検定」という基準があります。通常の用途では特に誤差が問題になることは多くありません。, |
| 大気−地表のエネルギー収支は、供給されたエネルギーと消費されたエネルギーを観測されたデータから計算した場合、どの程度、方程式が成り立っていますか? | 熱フラックスの和(H+λE)が有効エネルギー(Rnet-G)よりも2割程少ないという観測結果が多いです。ひとつの大きな問題です。 |
| 観測もモデルを作って、それにあてはめるようにして、いろいろな値を決めているようですが、そのモデルの確かさはどう確かめるべきなのでしょうか? | 別の方法での測定値との比較や、エネルギー収支式での確認もひとつの方法。ただし、理論として確立しているものは、普通は、式の正当性までを疑うことはない。傾度法の式についていえば、差分による勾配の算定や拡散係数の求め方には議論の余地があるが、勾配と拡散係数の積に従うという基礎式を否定するのは、非常に困難。 |