Abstracts and Introductions 2003/06/27

Andreas,E.L. and Decosmo,J.(2002) HEXOS乱熱フラックスデータにおける海飛沫の兆候
Jacoby-Coaly,S. et al.(2002) UHFウインドプロファイラー観測による境界層内の乱流散逸速度
Kara,A.B. et al.(2002) 大気−海洋間フラックス推定および1997-1998ENSOイベント
Brooks,I.M. et al.(2003) 海岸頭状地周辺の安定大気境界層の乱流構造:航空機観測とモデル結果
Oost,W.A. et al.(2000) 海洋熱・水フラックスにおける安定度効果
Anderson,P.S.(2003) ソーダと凧係留ゾンデによる安定大気境界層中の微小規模構造の観測
Zagar,M. et al.(2003) 海岸の海向きの表面乱流運動量フラックスの小規模変動を決定する方法
Subrahamnyam,D.B. et al.(2003) INDOEX, IFP-99におけるインド洋と中部アラビア海上の混合層高さの多様性
Sempreviva,A.M.andHojstrup,J.(1998) 海洋表面層における温度と湿度の分散、共分散の輸送
Makin,V.K.(1998) 風速波と飛沫の存在する中の大気−海洋熱交換
Shinoda,T. and Uyeda,H.(2002) 夏期モンスーン期の東中国の湿潤領域上の深い対流雲の発達における効果的な要素
Smith,S.D. et al.(1996) 大気−海洋フラックス:25年間の進歩
Smith,S.D.(1989) 海面上の水蒸気フラックス
Tsukamoto,O. and Ishida,H.(1995) TOGA-COARE IOPの赤道太平洋上の乱流フラックス観測とエネルギー収支解析
Ding,Y.H. et al.(1995) TOGA-COARE IOP中の混合層の構造と海面フラックスの見積り パート1:混合層の構造
Ding,Y.H. et al.(1995) TOGA-COARE IOP中の混合層の構造と海面フラックスの見積り パート2:海面フラックスの見積り
Kanari,S., Kobayashi,C., and Otobe,H.(1995) 西部赤道太平洋上層の乱流熱フラックスと熱収支の見積り
Tukamoto,O. et al.(1995)
Weill,A. et al.(2003)
Brunke,M.A. et al.(2003)
Bentamy,A. et al.(2003)
Takahashi,T. et al.(1997)
Kaltin,S. et al.(2002)
Keir,R.S. et al.(2001)
Subrahamnyam,D.B. and Ramachandra,R.(2002)


Subarahamanyam, D.B. and Ramachandran, R. (2002) Air-sea interface fluxes over the Indian Ocean during INDOEX, IFP-99, J. Atmos. and Solar-Terrestrial Phys. 64, 291-305.

Keir,R.S., Rehder,G., Frankignoulle,M. (2001) Partial pressure and air-sea flux of CO2 in the Northest Atlantic during September 1995, Deep-Sea Reserch II 48, 3179-3189.

Kaltin,S., Anderson,L.G., Olsson,K., Fransson,A., Chierici,M. (2002) Uptake of atmospheric carbon dioxide in the Barents sea, J. Marine Systems 38, 31-45.

Takahashi,T., Felly,R.A., Weiss,R.F., Wanninkhof,R.H., Chipman,D.W., Sutherland,S.C.,Takahashi,T.T. (1997) Global air-sear flux of CO2: An estimate based on measurements of sea-air pCO(2) difference, Proceedings of the national academy of sciences of the united states of america 94(16), 8292-8299.

Bentamy,A., Datsaros,D.B., Mestas-Nuez,A.M., Drennan,W.M., Forde,E.B., Roquet,H. (2003) Satellite estimates of wind speed and latent heat flux over the global oceans, JC 16, 637-656.

Brunke,M.A., Fairall,C.W., Zeng,X., Eymard,L., Curry,J.A. (2003) Which bulk aerodynamic algorithms are least problematic in computing ocean surface turbulent fluxes? JC 16, 619-635.

Weill,A., Eymard,L., Ganiaux,G., Dauser,D., Planton,S., Dupuis,H., Brut,A., Guerin,C., Nacass,P., Butete,A., Cloche,S., Pedreros,R., Durand,P., Bourras,D., Giordani,H. (2003) Toward a better determnination of turbulent air-sea fluxes from several experiments, JC 16, 600-618.

Tukamoto,O., Ishida,H., Mitsuta,Y. (1995) Surface energy balance measurements around ocean weather station-T during OMLET/CWRP, JMSJ 73, 13-23.
タイトル:OMLET/WCRPの間の海洋気象基地-T周辺の表面エネルギー収支計測

要旨: 1998年から1991年にかけて、本州南方海域の定点T(29N,135E)付近で行われた海洋混合層の観測(OMLET)の期間に研究船・白鳳丸において大気海洋間フラックスの渦相関法による直接測定を行った。第1回目は1998年4月から5月にかけてで、これは海洋が熱を吸収して海洋混合層が減衰する時期にあたり、第2回目は1991年の1月から2月にかけて逆に海洋混合層が発達する時期に行ったものである。渦相関法は精度は高いが、種々の制約のために頻繁に行うことが困難である。そのため、長期にわたるフラックスの評価のためにはバルク法を併用して、渦相関法による結果に合うようにバルク係数の値を決めることが望ましい。これまでのこの海域での熱収支解析はすべてバルク法のみによって海面フラックスを評価したものであったが、本研究では渦相関法を基準にして得られたバルク輸送係数を用いて長期間の海面フラックスを算定した。船上で同時に測定した放射量の測定と併せて、海面熱収支を求めると、4〜5月には54Wm-2、1〜2月には-192Wm-2の熱量(Q)が海面に供給されることがわかった。本研究では顕熱フラックスの算定に当たってBrookの補正を考慮したので、潜熱フラックスの10%(それぞれ7Wm-2、16Wm-2)が顕熱フラックスに付加されたことになる。一方、T点での気象庁ブイの水温観測によれば、この期間の海洋混合層の熱容量の時間変化はそれぞれ356Wm-2、-297Wm-2で、上に述べた海面への熱フラックス(Q)の値との差が水平まはた鉛直方向の移流によって運ばれることになる。これらの結果についてこれまでの研究と対比して検討した。

イントロ:
 


Kanari,S., Kobayashi,C., and Otobe,H.(1995) Estimates turbulent heat flux and heat budget in the upper layer of the western Equatorial Pacific ocean, JMSJ 73, 597-609.
タイトル:西部赤道太平洋上層の乱流熱フラックスと熱収支の見積り

要旨: 1992年11月に、白鳳丸の航海(KH-92-5)が行われた。この航海で西太平洋赤道息の定点(0,156E)で11月12日から27日にかけてマイクロストラクチャーの観測が3-6時間毎に行われた。この観測データに基づき、この海域の表層の乱流熱フラックスならびに熱収支の見積りを試みた。

表層5m深の水温からの差が0.1℃となる深さで定義された表層混合層の観測期間における乱流熱フラックスは、混合層底部において常に下向きで最大239.1 W/m2であるが、観測期間で平均すると下向きに31.4W/m2にすぎない。また、この混合層内の熱収支バランスの見積りから、混合層が浅化したときに特に移流による熱の流入の影響が大きく、50%を超えることが示された。

一方、28℃の等温線に対応するサーモクライン頂部までを一定の厚さ(70m)のスラブ層(以下表層)と見なして、この層内の貯熱収支を見積もった。海上気象データから、11日間に海面を通して入るネットの熱流入は80MJ/m2と見積もられた。この表層全層における乱流熱フラックスは、上向きに最大50W/m2、下向きに最大250W/m2であるが、観測期間の全平均値は下向きに9.1W/m2であった。また、11日間の表層底部(70m)における乱流による熱流派下向きに9.3MJ/m2で、海面からの熱流入80MJ/m2とのさ70.7MJ/m2は、移流を無視すれば表層の昇温に寄与する筈である。表層の平均水温変化から見積もった正味の熱流入は84MJ/m2で、その差13.3MJ/m2が移流効果によるものと考えられる。これは、海面からの正味の熱流入量の16%にすぎない。


Ding,Y.H., Sumi, A., and Shen,X.S. (1995) Structures of the Mixed Layer and Estimates of Sea Surface Fluxes Part II: Estimates of Sea Surface Fluxes, JMSJ 73, 585-596.
タイトル:TOGA-COARE IOP中の混合層の構造と海面フラックスの見積り パート2:海面フラックスの見積り

要旨: 本論文は、TOGA-COARE集中観測期間中の境界層の特徴に関する研究の第2部である。使用したデータは、東経156度の赤道で1992年11月11日から27日にかけて東大海洋研の白鳳丸で観測されたデータで、海面フラックスは3つの異なる係数を使用してバルク公式を用いて求められた。最初は、中立の時の抵抗係数と風速の間が、ほとんど線形である関係式が用いられ、その後、安定度の効果が入れられた。この様にして求められた運動量、顕熱、潜熱のフラックスは、それぞれ、0.0316 N/m2、10.2 W/m2、190.3 W/m2であった。局所的な風はフラックスの強さに大きな影響を与え、4回の西風時には、貿易風の東風の時よりも、大きなフラックスであった。フラックスの大きさは、特に、弱風時には、安定度に大きく依存する。正味のフラックスは、海洋から大気ということであった。最後に、本研究による評価と他のバルク係数、および、渦相関法による評価と比較を行い、妥当であるとの結論になった。

本研究によっても貿易風の東風から西風に至るまでの風の場の強さの変動が混合層の構造と海面フラックスに大きな影響を与えることが明らかにされた。

イントロ:
 運動量、熱、水蒸気の大気−海洋交換の調査は、TOGA-COAREの重大な要素と認識されている。TOGA-COAREの境界面フラックス成分の目的のひとつは、暖かいプール領域における運動量、熱、水蒸気フラックスの高質データセットを供給し、風や、大気対流や嵐のようなメソスケールの形態が引き起こすフラックスの短期間の多様性の規模を決定することである。さらに、表面フラックス推定のための様々な経験式の改善も期待された。この20年間に、熱帯領域での表面フラックスの測定と見積もりは、例えば、BOMEX, AMTEXm GATE, MONEXなど、わずかにあるが、TOGA-COAREは弱風、高い海面温度、著しい大気層状性によって特徴づけられるユニークな環境条件下での表面フラックスの重要な情報をはじめて供給した。

海洋表面フラックスは、渦総観、消散、バルクパラメタ化法のような手法の違いで分けられる。その中で、渦相関法は、乱流フラックスのもっとも直接的な測定であり、もっとも精密である。しかし、センサーの動きの注意深い補正を必要とする。バルク法は、間接的で、半経験的手法であるが、未発達の甲板観測からローカルな表面フラックスを決められるだけでなく、総観規模あるいは広域スケールの表面フラックスを見積もることができる。したがって、バルク法は現在、様々な目的で使用される実践的な手法である。しかしながら、バルク法は、様々な不確実性に悩まされる(Blanc, 1985, 1987; Hanawa 1987; Weare, 1989)。つまり、発展途上のバルク法を基礎として用いるフラックス計測の精度、バルク係数体系の多様性、センサーの精度、観測プラットホームによる計測の歪みなどの問題を含んでいる。Blanc(1987)が示すように、これらの一般的な不確実性は、平均精度において、0.025-1.0N/m2の運動量については35%-105%、5-150W/m2の顕熱フラックスについては、35-220%、10-300W/m2の潜熱フラックスについては40-215%である。したがって、熱帯海洋領域上、特に暖かいプール上のバルク−フラックス体系を洗練するために、著しい努力が必要である。

本論文は、北緯0度、東経156度の定点サイトの1992年11月の研究船白鳳丸による甲板観測を用いてバルク体系による海洋表面フラックスの見積りを目的とする。渦相関法による直接フラックス計測もまた同船甲板上において行われ、見積もられたフラックスの比較が行われる。最後に、精度解析が行われ、本論文でなされたフラックスの見積りの信頼性について議論する。


Ding,Y.H., Sumi, A., and Shen,X.S. (1995) Structures of the Mixed Layer and Estimates of Sea Surface Fluxes Part I: Structure of the Mixed Layer, JMSJ 73, 569-583.
タイトル:TOGA-COARE IOP中の混合層の構造と海面フラックスの見積り パート1:混合層の構造

要旨: TOGA-COARE集中観測期間中に、東大海洋研の白鳳丸が東経156度の赤道上に於いて、1992年11月11日から27日にかけて定点観測を行った。この時の海上気象観測、及び、高層気象観測を用いて混合層の変化及び構造の解析と海面フラックスの評価が行われた。

論文の第1部は、混合層の変化、及び、構造が論じられている。主な結果は貿易風の東風の時には、混合層高度は比較的高く、多くの場合は、800-900m程度であり、その上に乾燥した空気がかぶさっている。しかし、ほとんど顕著な逆転層は見あたらなかった。一方、攪乱に伴う西風の場合には、混合層高度は相当程度低く抑えられ、あるいは、なくなっていた。深い湿潤層がしばしば観測された。

非常に乾燥した空気の進入が2例観測された。この際には、混合層高度が上昇し1.5kmにも達した。この乾燥空気の侵入についても議論される。

イントロ:
 TOGA-COARE領域は東経140度〜180度、北緯10度〜南緯10度の間の領域として選択された。この領域は年間を通じて暖かいプール領域を含んでいる。この暖かいプール領域上の広範な対流活動とそれに伴う降水のために、著しい大気加熱(あるいは熱源)が生じ、熱的駆動力という観点から見て、領域スケールあるいは大規模スケールの熱帯循環に重要な効果を及ぼしているだろう。海洋と大気の間の熱エネルギーと運動量の交換はその境界面、すなわち、海洋境界層を通じて引き起こされる。したがって、その境界層の発達と構造は、この境界面交換過程と境界層中の更に上方の輸送に直接的に関連がある。

一方、大気流れ、あるいは、風速場の観点から、TOGA-COARE領域は独特の大規模スケールの姿を持っている。西風と東貿易風の間の相互作用が低層で起こっていることが観測される。北半球の夏に、夏期西季節風が完全に発達し、しばしば、本領域へ拡大し、北方に著しい収束帯(ITCZ)を伴う。冬期には、北東貿易風と南東貿易風が強まり、著しい西向の侵入(penetration)を被り、強い収束は西向に動き、インドネシアの西部へ達する。南半球では、均質な南東流れが南緯20度へ後退し(Barnett, 1983)、北オーストラリアの東海岸沖で強い収束帯を形成する。したがって、COARE領域のほとんどは、通常、東貿易風に支配される。このような大規模大気流れの点で、本領域は、通常、複数の層構造を持つ大気境界層によって特徴つけられる。おおくの研究者は、熱帯太平洋上の貿易風帯における構造と物理過程の調査を行ってきた(Riehl, Yeh and Malkus, 1951)。それらによって、熱帯太平洋上の貿易風帯で、海洋から大気への正味の熱および水蒸気が輸送されることが明らかとなった。貿易風逆転の下で集積される余剰エネルギーは下流へ輸送され、その熱は、ITCZで、深い対流雲へと放出される。

近年の観測(Chu, 1988; Lau, Nakazawa and Sui, 1991; Delcroix et al., 1993)によると、本領域の比較的安定な貿易風流れは時々"西風爆発(weserly wind bursts)"によって遮られる。西風爆発は超雲塊システム(super cloud cluster system)の動きに引き続いて現れる。超雲塊システムが、一般に西から東へ定周期モードで動き、COARE領域へ入るところで、そのシステムは本領域の対流活動を大きく増大させ、領域風速場の構造を劇的に変化させる。この際、大気境界層は、それに対応して変化し、通常の貿易風型の境界層に比べ、著しい多様性をもつ。その特異な状況は領域的なエネルギー循環過程に影響を与えるだけでなく、ENSOイベントのある種の引き金メカニズムともなる(Wyrtki, 1975)。したがって、境界層の発達と構造とそれに関連する表面フラックスの調査は、非常に重要で、特別な意味がある。これが本研究の主要な到達点である。本論文は本研究の第1部であり、1992年の11月のTOGA-COARE領域上の混合層についての観測的な側面を主に記す。第2部は、海洋表面フラックスへ方向を変え、フラックスの短期間の多様性と偶発的な変動を特に強調する(Ding et al., 1995)。本研究によって、TOGA-COARE IOPの間の惑星境界層の姿についての見識が得られるだろう。


Tsukamoto, O. and Ishida, H. (1995) Turbulent flux measurements and energy budget analysis over the equatrial Pacific during TOGA-COARE IOP, JMSJ 73, 557-568.
タイトル:TOGA-COARE IOPの赤道太平洋上の乱流フラックス観測とエネルギー収支解析

要旨: 1992年11月のTOGA-COAREの強化観測期間に、西太平洋赤道上の東経156度の定点に配置された研究船白鳳丸において、海面と大気との間に交換される熱や水蒸気フラックスを渦相関法によって直接測定した。16日間の観測期間の前半は穏やかな晴天の日が多かったが、後半には対流活動が活発になってスコールが多く見られた。平均的な海面から大気への熱輸送量は顕熱フラックスが14Wm-2(Brookの補正を考慮した場合)、潜熱フラックスは88Wm-2になる。しかし、スコールに伴う積雲からの吹き出しによって、風速の増加、気温・湿度の減少をもたらし、熱フラックスの値は倍増することがわかった。

渦相関法の結果をもとにして得られたバルク輸送係数の値はCH=1.32×10-3、CE=1.16×10-3となり、CHについては従来の値よりはやや大きい。これらの係数は風速が小さくなると次第に増加する傾向が見られ、これはこれまでいくつかのモデルに取り入れられていることを実証したことになる。渦相関法で得られたフラックスの値と、船上での放射観測の結果から、海面での熱収支を評価した。今回の観測期間の平均的な値として、海面には68Wm-2の熱エネルギーが正味与えられていることになる。今回のデータは渦相関法による観測が行われている他の3隻の観測船、Moana Wave、Franklin、なつしまのものと併せて、長期間で広域でのバルク法によるフラックスの算定の際の基準値になると考えられる。

イントロ:
 TOGA-COARE(赤道海洋と広域大気−海洋大気結合応答観測)は、西太平洋城野熱帯における大気−海洋相互作用の研究のために計画された。中核となる計画は、長期間の暖水プール領域上での大気−海洋間のフラックス推定であろう。大気−海洋相互作用を通じて、大気システムおよび海洋システムは制御され、ENSOなどのような気候システムの変動を導く。これまで、熱帯太平洋上での系統的な観測はなされていない。

大規模な観測は、1974年にGATEとして赤道大西洋上で行われた。これは、主に、熱帯対流の研究のために計画され、多くの観測が船と航空機を用いてなされた。境界層観測もまた積雲対流の周りでなされた。これは、大気研究の大きなプロジェクトであったが、海洋と大気の間の結びつきの調査はCOAREほど強力ではなかった。

大気−海洋結合の相互作用研究は気候システム調査の最も重要なテーマであり、長期間の広域でのフラックス推定は必要不可欠である。空間的、空間的に大規模な領域のフラックス推定にとって最も有望な手法はバルク法である。多くの船舶データ、ブイデータ、さらに衛星データすら利用可能である。しかしながら、バルク法において最も重要な問題は輸送係数の決定である。多くの手順が提案されているが、決定的なものはない。今回のCOARE領域は、通常時には弱風と大きな入力放射量によって特徴づけられるだろう。輸送係数の挙動はあまり受け入れられず、表皮層付近の複雑な水温プロファイルが注意深い測定を必要とするもうひとつの問題である。慣性消散法もまた海洋上での有望なオプションである。しかしながら、応答の早いセンサーといくつかの仮定が必要となる。渦総観フラックス測定は、最も精密であると考えられ、IOPの間、4隻の船舶の甲板で行われた。研究船白鳳丸はそのひとつである。さらに、相互比較期間も設けられ、実り多い結果を得た。これは、それぞれのセンサーとデータ処理手順の比較の最初の機会であった。相互比較の結果をもとに、観測値の精度は向上し、空間分布についての価値ある議論を導いた。この手法は全ての船舶に応用することは出来ないが、これらのデータは、標準的なその場のフラックスと考えられ、キャリブレーションによりバルク法による推定手順の改良に有効である。それによって、アルゴリズムは他の船舶やブイ、衛星の広範囲のデータへ応用可能である。


Smith,S.D.(1989) Water vapor flux at the sea surface, Bound.-Layer Meteorol. 47, 277-293.
タイトル:海面上の水蒸気フラックス

要旨: 海面での蒸発速度の決定のための手法と機器がレビューされる。局地的な影響のない観測サイトにおいて、中立条件で風速が小さいか穏やかな場合の蒸発係数CEN=1.2×10^-3という合意がある。Businger-Dyerのフラックス−勾配関係式と結合して、パラメタ化のスキームが提案される。波が壊れる時の飛沫の水滴の蒸発は風速が大きい時のCENを増大させると予期されるが、この直接的な測定はみあたらない。最近、衛星データから熱帯地域の水蒸気フラックスを見積もることが可能となってきてた。時間と空間の両方の関数となる大規模な蒸発イベントの研究の可能性が開かれてきた。

イントロ:
 海面の水、熱、運動量フラックスは、放射フラックスとともに、水と空気の構成と混合を制御し、海洋と大気の力学的、熱力学的強制力の主要な原因である。これらのフラックスを知ることは、局地的研究から広域気候変動までの応用に必要不可欠である。リモートセンシングの技術は、要求されるパラメータへのレーダーの後方散乱や赤外吸収率のような海面の放射特性とのリンクに頼るものだが、風速応力、波、海面の水・熱フラックスの理解に更なる要求を置く。

第4節 渦フラックス研究:
 Pond et al.(1971)の古典的なデータは、1969年のBOMEXで、特殊なフロート式のプラットポーム上でLymanα湿度計をもちいて得られた。概ね不安定な層で風速が4〜7m/sの時、CE=1.2±0.2×10^-3という結果を得た。これは、中立でのCEN=1.1に相当する。Paulson et al.(1972)は、BOMEXのプロファイル計測から、25%大きな蒸発を算定し、十分に一致していると報告した。Holland(1972)は、高度18,45,152mでの航空機による蒸発の渦相関法(Bean et al., 1972)を報告し、Pondらの表面付近の渦フラックスは、日蒸発量5〜6mmの大気・海洋領域収支からの見積りと良く一致すると報告した。Friehe and Schmitt(1976)は、Pondらのデータと同一プラットホームの他の2つの結果を結合し、CE=1.32を得た。これはCEN=1.2に相当する。

Kruspe(1977)は、マイクロ波反射計と超音波風速計によるドイツ湾とバルト海の渦フラックスをPondらのデータに追加して、CE=1.36±0.25とした。しかし、U10(Qs-Q)=5(m/s)(g/kg)の時の蒸発がゼロとなるような負の切片をもった。彼は、冷たい表面の薄い層が存在し、バルク海水温から算出する表面比湿Qsが過大であると示した。

Garratt and Hyson(1975)は、北シナ海の島の海岸線のタワーで、赤外線湿度計と鉛直プロペラ風速計とflaxatronアナログ渦相関解析をAMTEX74で用いた。そこで得られたCEN=1.6±0.3は上述の開海面の値よりも大きく、タワーの風上のサンゴ礁で崩れる波からの飛沫が影響しているだろうと考えれた。Francey and Garratt(1978)は、CEN=1.5をAMTEX75で得た。Fujitani(1981)はAMTEX74と75での船甲板の渦フラックスシステムからCE=1.05を報告した。彼は、船の回転運動による風速ベクトルと、船の重心に対して超音波風速計から読み替えた風速ベクトルを補正した。船の動きとともに変化する船による風のゆがみによる誤差の可能性があるが、その値は、開海面の値と大きく違わなかった。AMTEX観測がカバーした風速レンジは5〜15m/sであった。

Antonia et al.(1978)は、オーストラリアのBass海峡の沖からの距離80km、水深70mの油田プラットホームの竿にLymanα湿度計とプロペラ風速計を取り付けて測定した。5mの高さでCE=0.82±0.15と、レビューする中で一番小さい。プロペラ風速計の応答が悪いのと、プラットホームの影響で過小かもしれない。

大規模湖国際観測年(IFYGL)において、1971-1972に、Smith(1974)はオンタリオ湖のタワーでのCEを9つ報告し、平均は1.2だった。Anderson and Smith(1981)は、北大西洋のNova Scotiaの沖160kmに位置する低い砂の島であるSable島のビーチの10mタワーで海風の時に、Lymanα湿度計と音波風速計、圧力式風速計を用いて、CEN=1.27±0.26を得た。彼らは上向きフラックス、下向きフラックスの両方を報告し、後者は比湿勾配のマイナス値に対応していた。風速レンジは5〜11m/sで、CENは風速の増大とともに増大する傾向を示した。AMTEX観測の時と同様に、タワーの風上に砂州があり、そこで波が崩れ、飛沫が開海面上よりも蒸発に寄与したと考えられ、サーフゾーンの大きさと密度が風速とともに増大し、CENに変化を与えた可能性がある。

北海のオランダ沖の海上プラットホームMeetpost NoordwijkでのLymanαと超音波風速計を用いた1986HEXOS主要観測の予備的結果は、風速5〜18m/sに対して、CE=1.2であると示した(Smith and Anderson, 1988)。HEXOSプロジェクト(Katsaros et al., 1987)から得られる多くの広範囲のデータは、執筆時点では解析されるべく残されている。そのデータは、プラットホーム、船舶、航空機からの渦相関およびスペクトル散逸測定を含み、これまで得られたものよりも十分に大きな風速におけるものを含む。また、同時に、波の崩れ、エアロゾル水滴分布、領域気象、海洋状態の観測もなされた。いくつかのデータは20m/s以上の風速まで広がる。

Thorpe et al.(1973)は、Lymanαをもちいた渦相関研究から、Beaufort海の凍結した海面からの昇華は日変化し、CE=0.55であったと報告した。外気温は低く-16〜-28℃であり、表面の水蒸気圧と昇華速度は水面よりも非常に小さかった。

第5節 プロファイル研究: Dunckel et al.(1974)、Krugermeryer et al.(1978)、Paulson et al.(1972)
第6節 スペクトル消散研究: Large and Pond(1982)
第7節 パルク法研究: Bunker(1976), Isemer and Hasse(1987), Bunker et al.(1982), Kondo(1975), Blanc(1985, 1987), Masagutov(1981), Launiainen(1983)
第8節 飛沫効果のモデル化
第9節 衛星データからの水蒸気フラックス


Smith,S.D., Fairall,C.W., Geernaert,G.L. and Hasse,L.(1996) Air-sea fluxes: 25 years of progress, Bound.-Layer Meteorol. 78, 247-290.
タイトル:大気−海洋フラックス:25年間の進歩

要旨: この25年の間、大気−海洋相互作用の研究は、海洋気候学の小さな枝葉から、海洋と大気の結合結合システムのモデルにおいて鍵となる役割を演ずるまでに進歩してきた。表面境界層のMonin-Obukhov相似則とフラックス測定の直接的、間接的手法を元に、大気−海洋フラックスに関する知識は増大した。これは、気象予報、気候予測に使用される大気と海洋の循環モデルを結合させるのに必要な境界条件を供給する基礎である。現在の理解の概説ののちに、パラメタ化手順の議論を行い、理論のテストと結論の定量化を行ってきた観測研究の年代記を記す。


Shinoda,T. and Uyeda,H.(2002) Effective factors in the development of deep convective clouds over the wet region of eastern China during the summer Monsoon season, J. Meteorol. Soc. Jpn. 80(6), 1395-1414.
タイトル:夏期モンスーン期の東中国の湿潤領域上の深い対流雲の発達における効果的な要素

要旨: 表面からの顕熱・潜熱フラックスの供給を含む2次元雲解像モデルを用いて、東部中国の梅雨前線(湿潤領域)から遠い南部領域上での深い対流雲の発達を研究した。この領域では大規模な収束が見られないにもかかわらず、1998年のGAME/HUBEX IOP(集中観測期間)の後半にいくつかの深い対流雲が観測されたが。数値シミュレーションにより、深い対流雲の発達とその発生時刻と衰退時刻が再現された。対流混合層の発達とこの層の上部での薄い対流雲の生成の形成過程もまた、シミュレートされた。

地表の土地利用(つまり、顕熱・潜熱フラックスの供給)と、中部対流圏の相対湿度についての感度分析の結果、本領域上での深い対流雲の発達に対する2つの効果的な要素があることが示された。ひとつは地表からの大量の潜熱フラックス、もうひとつは中部対流圏の湿潤環境である。地表からの潜熱フラックスは対流雲を生成する水蒸気を供給する。水田は下部大気へ大量の潜熱フラックスを供給することができ、本領域に広く分布している。一方、中部対流圏の湿潤環境は薄い対流雲を引き起こすことができ、薄い対流雲内の正の浮力が同調する大気質量の冷却を引き起こす蒸発によって失われることがないため、深く発達できる。さらに、この中部対流圏の湿潤環境は薄い対流雲の発達によって形成され、対流混合層から水蒸気を輸送する。

イントロ:
 夏のモンスーン期(6月〜7月)に、梅雨前線は中国大陸から日本列島に伸びる。この前線は経線に沿って鋭い水蒸気勾配を持つが、温度勾配は弱い。前線の南側および北側の領域はそれぞれ、湿潤領域と乾燥領域である。前線内の雲塊は強い雨を生成し、中国本土(特にYangtze河とHuaihe河の渓谷のあたり)と日本列島(特に九州)で深刻な災害を引き起こす。多くの研究者が、観測(例えばOgura et al. 1985; Ishihara et al. 1995; Takahashi et al 1996)と数値計算(Nagata and Ogura 1991; Kato 1998; Chen et al. 1998)を通して雲塊の構造を明らかにしようとしてきた。

梅雨前線付近で強い降雨イベントを引き起こす水蒸気は前線(湿潤領域)から遠く南の領域を起源とする。Akiyama(1973)は、この前線領域における経度方向の水蒸気フラックスの発散と、経線に沿った同領域内の収束があることを示した。この経線に沿った収束は、経度方向の水蒸気発散を補償するだけでなく、梅雨前線領域における全水蒸気収束を引き起こし強い雨をもたらす。この収束は、南西モンスーンによる水蒸気の強い北向き水平輸送によって引き起こされる。Akiyama(1973)はまた、その湿潤領域周辺の水蒸気の収支と発生源を考えた。水蒸気の水平輸送は主に、この領域の下部対流層(700hPa以下)に制限される。水蒸気の発生源は、台湾近くの東シナ海の海面からの蒸発である(Akiyama 1973; Akiyama 1975)。Saito(1966)は、中国大陸上の蒸発散が発生源として無視できないと示した。

一般に、梅雨前線から遠い南の領域は太平洋の亜熱帯性高気圧に覆われ、この領域には大規模な収束はほとんどない。この領域に大規模収束がほとんどないのに、深い対流雲は中国大陸上で夕方に非常に頻繁に発達する(Kato et al. 1995)。深い対流雲の発達のためには、存在のための大きな潜在的不安定性が必要である。Ninomiya(1978)は大きな潜在的不安定性が梅雨前線から遠い南の領域に現れ、中立の層状化が梅雨前線領域に現れると明らかにした。特に東シナ海と太平洋上のこの潜在的不安定性の存在はMurakami(1959)とAkiyama(1973)にも示されている。日中、中国大陸上からの顕熱フラックスが海洋上よりも大きいため、この潜在的不安定性は中国大陸上で大きいはずだ。一般に、大きな潜在的不安定性は深い対流雲の発達の必要条件であると考えられている。

グレートプレーン上で、厳しい嵐(深い対流雲の複合体)が発達する時、中部対流圏は暖かく乾いた空気塊で占められる(Emanuel and Raymond 1993)。この暖かく乾いた空気塊は、メキシコ高地上の対流混合層を起源とし、Lakhtakia and Warner(1987)に示されたように、メキシコ湾を起源とする冷たく湿った空気塊上を移流してくる。この層状化が低層の抑制逆転を引き起こし、その逆転が対流不安定の開放を抑制する。大きな対流不安定が蓄えられ、深い対流はこの不安定が開放される時にほとんど発達する。したがって、この潜在的不安定の開放過程がグレートプレーン上の深い対流の発達に重要な役割を果たす。Carlson et al(1983)とLakhtakia and Warner(1987)は集中した深い対流がこの逆転範囲の縁に沿って起こることを見つけた。一方で、Neiman and Wakimoto(1999)は、拡大する総観規模の前線と乾燥前線の融合によって、逆転が壊される時に、深い対流が生成されると示した。

深い対流雲は、大規模収束がほとんどない場合でも、中国大陸の湿潤領域上で発達し、中部対流圏は南西モンスーンによる水蒸気の供給のため比較的湿潤である。中国大陸の湿潤領域上での深い対流雲の発達過程は、グレートプレーン上と同じだろうか?あるいは、東部中国の湿潤領域上の深い対流雲の発達の要素は潜在的不安定性だけであろうか?本研究の第一の目的は、したがって、本領域上の深い対流雲の発達に関わる効果的な要素を明らかにすることである。更に、一般に対流雲は環境の特徴を変化させ得ると考えられる。本研究の第二の目的は本領域上の環境への対流雲の効果を調査することである。これらの2つの目的を達成するために、対流雲の発達における効果的要素と本領域上の環境におけるその影響を、雲解像モデルを用いて調査する。観測の概観と深い対流のケースタディーを第2節に示す。第3節では数値シミュレーションの外枠を示し、第4節でケーススタディーと計算された深い対流雲の感度分析のいくつかの結果を示す。第5節において、本領域上の深い対流雲の発達における効果的な要素が議論され、第6節で結論が述べられる。


Makin,V.K.(1998) Air-sea exchange of heat in the presence of wind waves and spray, J. Geophys. Res. 103, 1137-1152.
タイトル:風速波と飛沫の存在する中の大気−海洋熱交換

要旨: 波は表面応力の重要な部分を引き出す。波が崩れる時、波は大気へ飛沫を放出する。飛沫は蒸発し、波の上の熱と水蒸気のバランスに影響を与える。層状海洋表面境界層(MSBL)の1次元モデルは運動量フラックスへの波の効果と熱・水蒸気フラックスへの飛沫の効果を直接的にカウントする。モデルはバルクパラメタ化に対して、より高次のパラメタ化とみなされる。モデルは運動量と乱流力学エネルギーと消散率の収支式にもとづく。一般的な観測による知識が海上の噴出する水滴密度のパラメタ化に用いられる。すなわち、表面水滴密度は大気の摩擦速度の3乗に比例し、波上の高度に伴う水滴密度の高速減衰は、指数減衰によってパラメタ化される。熱・水蒸気・運動量の交換係数は風速と海の状態によって計算される。モデルの力学部分の一貫性は、せん断応力係数の測定によってチェックされる。熱力学部分の一貫性は弱風時の顕熱フラックスの測定によってチェックされる。そして、飛沫の効果はより強風に対して調べられる。25m/s以上の風に対して、熱と水蒸気フラックスに対する飛沫の効果は有意になることが示される。飛沫の規模と符号が、大気の層状化に依存して、熱・水蒸気フラックスを決定する。飛沫が、海上における熱・水蒸気交換における重要な役割を果たすかどうかという問題を解決するために、25m/sの風速の異なる層状化状況で顕熱と水蒸気フラックスの同時測定が必要である。

イントロ:
 風波は、大気−海洋相互作用の目に見える兆候であり、この過程において能動的な役割を演じる。事実、波は、運動量、顕熱、水蒸気の表面輸送の形成と規定にとって重要である。大気−海洋相互作用における波の役割は風速の増加に伴って、増大する。海面がまったくスムーズで連続していれば、波はまったく穏やかな風によってさえ輸送速度を増大させる。波が崩れ始め、海飛沫を形成する時、波は更に輸送速度を増大させる。海洋表面境界層(MSBL)における大気の流れの力学における波の効果は、いまや、ある程度良く理解されている(Janssen, 1989; Makin, 1990; Chalikov and Makin, 1991; Caudal, 1993; Jenkins, 1993; Chalikov and Belevich, 1993; Makin et al, 1995; Makin and Mastenbroek, 1996)。波は、(抵抗機構の形成、すなわち、波の傾斜と表面の波が引き起こす圧力の関係によって)表面応力の熟慮すべき部分を引き出し、MSBL内の乱流の鉛直構造を決定する(Makin and 顕熱と湿度の海上の交換係数が抵抗係数ほどには風速には殆ど依存しないことは野外観測からよく確立されている(Anderson, 1993; DeCosmo et al., 1996; Friehe and Schmitt, 1976; Geernaert, 1990; Katsaros et al., 1987, 1994; Large and Pond, 1982; Smith, 1980, 1988, 1989)。抵抗係数と顕熱交換係数の風速依存性は海面での運動量と熱の交換機構の相違によって説明される(Makin and Mastenbroek, 1996)。広範囲までの運動量は、(抵抗を作り出す)波と関係する波が引き起こす動きが組織されることによって輸送される。熱は粘性によってのみ輸送される。抵抗の形で表面応力を支配し、MSBL内の乱流の鉛直構造を決定する。波上の顕熱と湿度のフラックスは乱流の拡散率によって決定され、乱流は波に影響を受ける。個の場合、波は熱(顕熱・潜熱)フラックスに間接的な影響をもつだけである。顕熱と湿度交換係数は通常一定とされ、すなわち、風速とは独立とされる(Anderson, 1993; DeCosmo et al., 1996; Friehe and Schmitt, 1976; Large and Pond, 1982; Smith, 1980, 1988, 1989)。

しかしながら、波は直接、顕熱と湿度フラックスに影響を及ぼし得る。波は崩れる。崩れた波は飛沫を大気中へ放出する。飛沫のすいていきは蒸発し、MSBL中の顕熱と水蒸気の均衡を変化させ得る。水滴の蒸発に関連した追加の項が熱と湿度の収支式に現れる。この項は、波が引き起こしたものであり、波の上の運動量の収支式中の抵抗形式項に類似している。もし、この波が引き起こした、あるいは、飛沫が仲介する顕熱および湿度フラックスが直接的な乱流フラックスに比するものになったら、その時は、海の飛沫が顕熱と湿度の交換過程で重要な役割を果たす。

海面からの蒸発、すなわち、熱と水蒸気フラックスにおける海飛沫の効果の決定の最初の試みは、1970年代の初めになされた(Bortkovskii, 1973; Wu, 1974)。この20年の間、この問題についての研究と理解には目覚しい進歩があった(Andreas et al.(1995)の包括的なレビューを見よ)が、多くの不確さが残っている。Andreas et al.(1995)の3ページ目にかかれているように、「観測研究が困難で、過程が複雑かつ双方向性を持ち、海飛沫の生成と飛沫による熱・水蒸気輸送の理論が未だ未発達であるため、その分野は...未だ議論が広まっている。」

その文献によれば、風速15m/s以上で生み飛沫蒸発の効果が重要となり、顕熱・水蒸気フラックスに影響を及ぼすとされている。Andreas(1992)は理論を示し、U10=20m/sの風速においては、水滴が仲介する潜熱フラックスは直接の潜熱フラックスの45%になることを発見した。Fairall et al(1994)はAndreas(1992)が展開したアプローチの単純化し一般化した派生物を用いて、大気−海洋フラックスへの海洋飛沫の寄与は約20m/s以上の風速において直接乱流フラックスと比するようになると示した。それとは対照的に、Hasse(1992)は、いくつかの一般的な理論的理論を用いて、(たぶんハリケーンのような風速を除けば)、熱フラックスへの飛沫蒸発の効果はほとんどありえないと主張した。

粗い海の敵対的な環境が開海上の顕熱・水蒸気フラックスの直接測定を極端に困難にし、2,3の測定があるだけである。海上水蒸気交換主要観測(HEXMAX)プロジェクト(DeCosmo et al., 1996; Katsaros et al., 1987, 1994; Smith et al., 1996)の主要な目的は海上の強風下での正確な経験的熱・水蒸気フラックスパラメタ化定式を明らかにすることであった。崩れる波と海飛沫が強風下で大気−海洋相互作用を支配し、15m/s以上の風速で有意に大気−海洋熱・水蒸気交換に影響を与えるという前提条件が置かれた。観測の成果はむしろ期待にそむくものであった。風速に伴う有意な変化は、風速18m/sまでの水蒸気交換係数と、風速23m/sまでの顕熱交換係数にはみられなかった。Large and Pond(1982)とAnderson(1993)は、不安定条件下で23m/sまでの顕熱フラックスの計測を報告した。いづれにも風速に伴う有意な変化は見られなかった。これまでのところ、水滴の蒸発が熱と水蒸気の輸送において有意な役割を果たしている直接的な観測上の証拠は得られていない。23m/sの風速を超えた観測がこの問題を落ち着かせるのに必要である。

MSBLにおける熱と水蒸気の輸送への蒸発する水滴の効果は蒸発関数によって決定される。蒸発関数は海波上の水滴濃度によって計算される。多くの観測が、海上の水滴分布を確立させるのに捧げられてきた(Blanchard and Woodcock, 1980; Bortkovskii, 1987; DeLeew, 1986a, 1986b, 1987, 1990, 1992; Monahan, 1968; Monahan et al., 1983; Miller and Fairall, 1988; Preobrazhenskii, 1973; Smith et al., 1993; Woolf et al., 1987; Wu, 1992; Wu et al., 1984)。海面における水滴生成速度は通常、海飛沫生成関数の項で表現され、それは水滴濃度に関係づけることができる。ことなる著者によって示された生成関数はAndreas(1994)とAndreas et al(1995)によってまとめられ、詳細な解析がなされた。生成関数のスペクトル形がリーズナブルに確立されたにもかかわらず、その規模は著しく変化する。しかし、一般に知られているように、水滴の生成は風からのエネルギーフラックス、すなわち、大気の摩擦速度の3乗に比例する(Andreas et al.,1995)。

水滴の鉛直分布もまた良く確立しておらず、2,3の観測があるだけである。海について集約したPreobrazhenskii(1973)のデータは、水滴濃度は買い表面の距離によって指数関数的に減少することを示している。Blanchard and Wookcock(1980)が同じ結論に達している。DeLeew(1986a,b,1987)が報告したデータは表面付近の高さの指数的減衰からの偏差を示し、約2mで濃度は負の勾配を持ち、Preobrazhenskii(1973)の研究と一致した。彼のレビューで、Wu(1990)は構成する様式における水滴濃度の鉛直勾配を定量化するのに十分なデータがないと主張した。しかし、一般に知られているように、濃度は海面からの高度に伴って非常に急激に減少し(Wu, 1990)、それは指数減衰でよく記述される。実験室での計測とその数値実験(Edson and Fairall, 1994; Edson et al., 1996)は水滴濃度が高さに伴って指数関数的に減衰することをしめした。

本論文では、この複雑な問題の理解に、以下の問いに答えることで寄与することを試みる。もし潜熱と水蒸気の収支式における飛沫が仲介するフラックスの寄与が微小でないとすれば、この引き起こされたフラックスが波の上の温度と湿度の鉛直分布、および、顕熱と水蒸気の直接的な乱流フラックスの鉛直分布に、どのように影響をおよぼすか?顕熱と水蒸気交換係数における飛沫が仲介するフラックスの効果は何か?また、この効果は測定可能か?

海波上の大気境界層の記述のための理論的アプローチは運動量、乱流力学エネルギー、乱流力学消失、顕熱、湿度の均衡式に基礎を置く。モデルの動的な部分はMakin et al.(1995),とMakin and Mastenboek(1996)によって展開され、後者においては、中立に近い条件下での顕熱の均衡が考慮された。MSBLの特性は波のスペクトルの項で記述される海の状態に直接的に関係している。下部境界条件は、その時の水面によって、局所的な粗度長を分子層のスケールに関連付けることを許す。その場合、海粗度のためのCharnock型でない関係が、モデルにおいて規定される必要がある。そうすれば、海面の粗度(または抵抗係数)は、顕熱交換係数と同様に、モデルの解として得られる。最近の運動量と顕熱フラックスの同時計測の開海データ(Anderson, 1993)が抵抗係数と顕熱交換係数の風速依存性のモデル結果のテストのために選ばれた。風速が5〜20m/sの範囲で熱交換係数を仮想的に風速と独立のままとし、計算される抵抗係数は同じ風速範囲で100%まで増大するという野外観測と非常に良い一致を示す。

本論文で、層状化した大気中の顕熱と水蒸気のフラックスにおける蒸発する水滴の効果をさらに考慮するために、モデルが開発された。顕熱と水蒸気の均衡式中の波が引き起こす蒸発項を見積もるため、一般的な観測上の知見を元にした波上の水滴分布の単純な式を用いる。すなわち、表面の水滴濃度は大気の摩擦速度の3乗に比例し、波上の高度に伴った水滴濃度の素早い減衰は指数減衰によってパラメタ化する。減衰の長さは、有意な波高に関係付ける(Andreas, 1992; Andreas et al., 1995; Fairall et al., 1994; Edson et al., 1996)。問題はいっそうの単純化である。泡(spume)は水滴を生成せず、風によって尖った波の頂の機械的な水滴化の結果のみを考慮する。(Fairall et al.,1994が注意するように、水滴フラックススペクトルのこの部分は未だ推測にすぎない)。あぶく(bubble)が生成した水滴のみ考慮する。モデルを解くには以下の条件が必要となる。計算される抵抗係数が計測と一致すること。計算される件熱交換係数が計測と一致し、さらに、海飛沫の効果による有意な多様性が風速18m/s以下で得られないこと。解は均衡式に引き続き、それは、有限で正の交換系数値を必要とする。

現実の問題として、Wu(1992)の水滴濃度関数は風速18m/s以下で上述の条件を満たす。交換係数は、そして、風速30m/sまで評価され、海飛沫の存在下におけるその風速依存性が調査される。風速約25m/s以上で海飛沫の効果は有意になると示される。顕熱・水蒸気交換係数は、飛沫効果が重要でない風速10m/sでの値に比べて、100%まで増大(減少)する。海飛沫が仲介したフラックスの規模と符号は大気の層状化に依存することが示される。また、海飛沫が海上の熱・水蒸気交換において重要な役割を果たしているかどうかという問いに答えるためには、風速25m/sでの顕熱・水蒸気フラックスの直接測定が必要であることもまた、結論として挙げられる。


Sempreviva,A.M. and Hojstrup,J.(1998) Transport of temperature and humidty variance and covariance in the morine surface layer, Bound.-Layer Meteorol. 87, 233-253.
タイトル:海洋表面層における温度と湿度の分散、共分散の輸送

要旨: 本論文では、潜在温度Tと水蒸気混合比qの分散の収支に、q-Tの共分散収支と同様に取り組む。我々は鉛直輸送に焦点をあて、それらの項に含まれる量の研究を行う。輸送項の見積りは稀であり、我々の最善の知識にとって、それらは文献に同時に示されたことはない。この目的のために、海洋環境の2つの高度からの湿度と温度の乱流データの大量のセットが解析される。我々の結果と、安定度が中立から不安定な場合の先行研究の結果を比較し議論する。水の上の表面層中のTとqの振る舞いの相似性と相違が示される。

イントロ:
 温度と湿度が大気乱流輸送メカニズムの中で相似の物理量であるという仮説は、様々な表面層フラックス測定とパラメタ化手法において用いられる重要な仮定である。さらに、そのメカニズムを通して、乱流流れが強い物理量間の相関を維持し、そのメカニズムは、例えば、大気中の短軌道の電磁波あるいは音波の伝播に重要な反射指数の変動に関連する。温度Tや湿度qのような物理量は、能動的か受動的かで定義され得る。受動的な物理量は、その変動が大気塊の浮力に有意な影響を与えないと定義され、一方、浮力は能動的な物理量の変動に影響を受ける(McBean and Miyake, 1970)。Tとqの変動のいくつかの研究はこの20年の間になされ、それらは能動的か受動的かに定義された。McBean and Miyake(1970)は草地表面からのデータを解析し、水蒸気輸送が温度輸送より小さく、Tとqの相関度合いに依存することを発見した。したがって、彼らはqを受動的物理量、Tを能動的物理量と考えた。中立に近い状態では、せん断(シアー)の効果は、浮力の効果よりも非常に大きく、従って、温度と水蒸気は概して受動的物理量と考えられる。Fairall and Larsen(1986)は、表面付近の乱流がシアーによって駆動されているところでは、Tとqはどちらも受動的であると示す。一方、強い浮力が駆動する体制の場合、温度と湿度は密度変化に影響を与え、従って、それらはどちらも、能動的と考えられる(Tennekes and Lumley, 1971)。Mahrt(1976)は、33日間の日中のラジオゾンデから得られたu,T,qのプロファイルを解析した。彼は、上部混合層では、水蒸気プロファイルは温度プロファイルのような良く混ぜられた形を示さず、これは、自由大気からの調和によって説明されると記した。Mahrt(1976)は「境界層の頂部からの乾いた大気の調和が境界層を乾かせるように作用し、一方、表面からの水蒸気フラックスが混合を残存させる鉛直勾配を生成する境界層を湿らせるように作用する。」と書いた。

物理量間の相似性における完全な情報を得るために、異なる物理量間の相関係数が調査される。Tとqについて、相関係数は次式のように定義される。
 RqT=<q'T'>/σ(q)σ(T) 
ここで、σqとσTはそれぞれqとTの標準偏差であり、<q'T'>はqとTの平均共分散である。

AMTEX観測の間、RqTの鉛直プロファイルが得られた。RqTはz<Coulmann(1980)は、海と陸の両方の上の混合層におけるTとqの相関係数を研究した。彼は、w'の観点でのコンディショナルサンプリングを用い、qとTの相関係数は混合層のあらゆる箇所で、上昇塊と下降塊で同じでないことを見つけた。一方、混合層の下層三分の一における対流構造が仮想温度のような密度に関係する変数の項で研究されるかもしれないが、これは、もはや残りの層では適切ではないことを見つけた。Wyngaard and Brost(1984)とMoeng and Wyngaard(1984)は、伝統的な受動的物理量の鉛直拡散を支配する、いわゆるボトムアップおよびトップダウン過程を研究し、議論した。ボトムアップ過程は対流状態における表面フラックスとみなされる。この過程において、Tとqは、例えば、暖かく湿った表面からの暖かく湿った上昇気流において、正の相関をしめす。トップダウンプロセスは、混合層内で調和される自由待機からの乾いた暖かい空気とみなされる。彼らは、表面からの上昇気流は、乱流が小さくフラックスの弱い頂部からの下降気流よりも、非常に強い過程であるため、2つの形式の過程は同じ重みを持たないことを見つけた。しかしながら、Moeng and Wyngaard(1984)は、地表面フラックスに対する調和フラックスの比率が大きい場合、トップダウン拡散は表面までの物理量偏差分布に影響を与え得ると示した。様々な著者(Phelp and Pond, 1971; Mahrt, 1976, 1991; Coulman, 1980; Fairall and Larsen 1986; Weaver, 1990; De Bruin et al., 1993)が、地表面付近で観測された物理量変動は2つの成分をもち、ひとつは局地乱流によって生成され、もうひとつは局地的でない過程によって生成されると示している。対流境界層において、たとえば、大きな渦は、混合層からの大気、あるいは、局地的に見られるのとは異なった性質を持つ自由大気からの大気を、表面層まで運ぶことができる。さらに、均一でない表面は内部境界層の成長を引き起こし、表面層の局地的な過程や物理量間の相関を変化させるだろう。De Bruin et al.(1993)は湿度フラックスと湿度変動の局地的な生成がともに小さい乾いた表面上での観測結果を示した。彼らは、この状況で、頂部から運びおろされた湿度変動は観測された全変動の有意な割合となるだろうと主張する。一方、温度については、局地的に生成された変化が十分に大きく、情報から運びおろされた変化を覆い支配した。この状況において、モニンオブコフ(S-O)相似則の制約は崩壊させされた。必然的に、De Bruin et al.(1992)の議論は、対流境界層の底部において、いくつかの物理量はM-O相似則には厳密には従わないということであった。M-O相似則からの乖離は、温度と水蒸気のスケールパラメータT*とq*のどちらかが非常に小さい時にのみ述べることが可能である。ここで、T*=-<w'T'>/u*、q*=-<w'q'>/u*であり、<w'T'>と<w'q'>は乱流力学的鉛直熱・水蒸気フラックスであり、u*は摩擦速度である。Sempreviva and Gryning(1996)は、海洋表面層におけるRqTの振る舞いの有意な偏差を見つけた。彼らは、その年の異なる期間の3つの観測期間の間、海岸線マストにおいて記録されたデータから22m高度でのRqTを計算し、z/Lに対するRqTを示した。ここで、Lはオブコフ長である。彼らのプロットから、不安定な大気層状化状態の間、見積もられたRqTの値は著しく変動し得たことに気づく。たとえば、1992年6月の夏期観測でRqTは約0.8とみなせるのに対して、冬期観測の間、不安定条件にもかかわらずRqTは約0.6であった。さらに、Sempreviva and Gryning(1997)は、Sempreviva and Gryning(1996)と同じ観測からのデータセットを用いて、ひとつのケーススタディーを示した。1992年6月の沖からの風の6日間の間、ラジオゾンデが放たれ、混合層高さziが温度・湿度プロファイルの視覚的診断から見積もられた。同期間について、モデル(Batchvarva and Gryning, 1991)がziを計算するのに用いられ、その結果は、観測された混合高さと成功裏に比較された。モデル計算されたziと観測されたRqTの時系列がともに表示され、比較された。相関係数RqTは混合層高さと密接な関連を示した。混合高さが低い時はRqTの値は0.5から1の間にばらついた。一方、混合高さが成長する時には、RqTは増加し、そのばらつきが減少した。

McBean(1971), Wesely(1988), De Bruin et al.(1993), Sempreviva and Gyning(1996)は、水蒸気スケールパラメータq*で正規化された比湿の標準偏差σqが、M-O則からの偏差を示すことを報告した。Weaver(1990)は表面フラックスが大きい場合のみ、均一な領域内でのM-O則との一致を見つけた。不均一な領域において、彼はまたM-O則との一致を見つけたが、彼は普遍関数を改造しなければならなかった。一方、Champagne et al.(1977)とっては、σq/q*はM-O相似則に従うように見えた。さらに、Sempreviva and Gryning(1996)は、3つの異なる観測からのデータを用いて、σq/q*を見積り、その結果を、M-O安定度パラメータz/Lと、水蒸気フラックスについて計算したz/Lqに対してプロットした。ここで、z/Lqは仮想熱フラックスに対する概算式を用いてz/Lと繋がる。
 <w'Tv'>=<w'T'>+0.61T<w'q'> 
この場合、z/Lは次式で書き表せる。
 z/L=-gkz/T(u*^3) <w'T'>−0.61gkz/(u*^3) T/Tv <w'q'> 
つまり、
 z/L=z/LT+z/Lq
ここで、kはカルマン定数、gは重力加速度、u*は摩擦速度、z/LTは顕熱の効果を考慮したもの。この解析の結果、q-T相関の低い期間、σq/q*が全体のz/Lよりもz/Lqでよくスケーリングされ、M-O則との食い違いを示す。

Tとqの低い相関の原因の詳細な調査は、物理量の高次モーメントと一般的な形式の確率分布に取り組んだ。Mahrt(1991)は負のゆがみ(skewness)が混合層の頂部から表面層への乾燥空気の調和を表現すると示す。

温度構造は全境界層において良く知られていると信じられている一方で、境界層内の水蒸気状態の構造は未だ調査中である。特別な注意が、温度と湿度の相似性と相違へ払われ、また、いつ、どのように大規模過程が表面変動に影響を及ぼすかに払われる(Hogstrom(1990), Zilitinkevitch(1997)。さらに、乱流力学エネルギー収支に取り組んだ観測がいくつかある一方で、qとTの偏差とq-Tの共分散<q'T'>の収支、特に輸送項に取り組んだ研究はほとんどない。上述したような状況の枠の中で、我々は、輸送項に内包されるqとTの偏差とq-T共分散の鉛直フラックスに焦点をあてた。解析は中立近くから不安定の範囲の安定条件で行われた。中立条件では、相関係数はゼロ付近の値をしめし、不安定条件では最大値をしめす。さらに、生成項と輸送項の比較に取り組み、その結果は先行研究の結果と比較される。 


Subrahamanyam,D.B., Ramachandran,R., Gupta,K.S., and Mandal,T.K.(2003) Variability of mixes-layer over the Indian ocean and central Arabian sea during INDOEX, IFP-99, Bound.-Layer Meteorol. 107, 683-695.
タイトル:INDOEX, IFP-99におけるインド洋と中部アラビア海上の混合層高さの多様性

要旨: インド洋観測(INDOEX)の集中野外フェーズ(IFP-99)の間の海洋調査機(ORV)Sagar Kanya(SK-141クルーズ)から発射された気球起源のGLASSゾンデから集められた上部大気データは、西部熱帯インド洋と中部アラビア海上で観測された混合層高度の変化の研究に使用される。全クルーズの間、典型的な(ざっと午後2時に対応する)日中の混合層高さは、θvとqのプロファイルから得られ、200-900mの範囲で観測された。薄い混合層高度は、一般に、熱帯間収束帯(ITCZ)上で観測される。中部アラビア海上では、θvとqの鉛直プロファイルが海洋大気境界層(MABL)の2重混合層構造を示し、それは、インドの海岸線に近づくにつれて、徐々に消滅する。

イントロ:
 この20年から30年の間、熱帯海洋上の海洋大気境界層(MABL)の構造特性は、大西洋貿易風観測(ATEX)、大西洋層積雲輸送観測(ASTEX)、広域大気調査プログラム大西洋熱帯観測(GATE)、熱帯海洋広域大気(TOGA)、結合海洋大気応答観測(TOGA-COARE)(Hasse, 1990; Smith et al., 1996、それらで参照)などの様々な野外観測で、広く研究されてきた。しかしながら、熱帯インド洋上でのそのような野外観測はほとんどない。最初の時、国際インド洋調査(IIOE, 1963-1965)の間なされた船からのラジオゾンデと航空機からのドロップゾンデは熱帯インド洋上のMABLの構造を研究する価値のあるデータを供給した。しかし、IIOEデータはこの領域のMABLの異なる小層に線引きし、その特徴的な姿を引き出すのに適切ではなかった。熱帯インド洋、アラビア海、ベンガル湾上のMABLの姿は、インド−ソビエトモンスーン観測(ISMEX-73)、MONSOON77、モンスーン観測(MONEX 79)、ベンガル湾モンスーン観測(BOBMEX)、その他本領域上でなされた科学的クルーズからの観測が利用可能となったこの20年から30年の間に、浮かび上がり始めた(Bhat et al, 2001; Kumar et al., 1990; Kumar and Rao, 1990, 1989; Parasnis and Morwal, 1993)。本領域上の対等な野外観測がないため、熱帯インド洋は、もっとも調査されていない領域として残り、それゆえ、本領域上の下部対流圏の構造的特長は完全には理解されていない。この文脈で、インド洋観測(INDOEX)の様々なフェーズの間、西部熱帯インド洋のデータの疎な地域上で得られた気象学的データは、最重要の科学的重要性を獲得する。INDOEXプロジェクトの主要な目的のひとつは、エアロゾルとその領域的広域的気候へのフィードバックによる自然と人為の気候変化を研究することである(Ramanathan et al.,2001)。本研究は、気球から放たれたGPSローラン大気調査システム(GLASS)のゾンデから集められた上部大気データの利用によって、熱帯インド洋上の対流混合層高さの空間変化のよりよい理解の達成を目的とする。射出は、INDOEXの集中野外フェーズ(IFP-99)の間の海洋調査機(ORV)Sagar Kanyaからなされた。ある国際的野外観測が、1999年1月20日から3月12日の間、インド洋上の52日の期間、ORV Sagar Kanyaのオンボードでなされた。図−1は観測の航路を示す。1999年1月20日から2月11日の間、Goa(インド)からLouis港(Mauritius)まで(矢印で示される軌跡ABC)は、前進軌跡として参照される。1999年の2月17日から3月12日の間のLuis港(Mauritius)からGoa(インド)の軌跡はクルーズの帰還軌跡(軌跡CDEFA)として参照される。よりよい参照のために、全航海軌跡の間の船の位置は図−1におけるJulian dayに対応して印をうたれる(従って、4つの軌跡ABとBCとCDとDEFAがそれぞれ軌跡I、II、III、IVとして参照される。


Zagar,M., Svensson,G., and Tjernstrom,M.(2003) A method for determining the small-scale variations of the surface turbulent momentum blux seaward of the coast, J. Appl. Meteorol. 42, 291-307.
タイトル:海岸の海向きの表面乱流運動量フラックスの小規模変動を決定する方法

要旨: 海岸の海面におけるレイノルズ風速応力の小規模の変化が、陸が海より暖かい状態で、理想化された数値シミュレーションによって評価される。海面での運動量の乱流フラックスにおける海岸の小規模な影響を診断するための方法が提案される。パラメータが高解像数値モデルを元に定義される。この診断法は、大規模モデルまたは、観測の疎な地域での表面乱流運動量フラックスの変化を解くのに利用できる。必要な入力データは、背景となる風速、風向、海岸線での表面温度コントラスト、背景となる静的安定度である。陸と海面の温度コントラストはフラックス場における水平多様性を導びく。海岸からある距離の表面乱流応力は、沖合いへの風向だけでなく、沖からの風向の場合でも、温度コントラストへの平方根逆数依存を示す。運動量の乱流交換は、より安定大気である数100キロの沖合いまで、海岸から離れると、実質的に減少する。一般的に、安定海洋境界層である海岸近傍の海への表面応力は、ほとんど常に開海よりも小さいということが明らかになる。一般的に背景となる静的安定度は、鉛直乱流混合の規模を縮小する。また、発達した海の微風の海岸を横切る風速成分の速度は、大気の背景となる安定度によって、うまくスケーリングされる。

イントロ:


Anderson,P.S.(2003) Fine-scale structure observed in a stable atmospheric boundary layer by sodar and kite-borne tethersonde, Bound.-Layer Meteorol. 107, 323-351.
タイトル:ソーダと凧係留ゾンデによる安定大気境界層中の微小規模構造の観測

要旨: 同時点の音波の後方散乱、風速ベクトル、温位の高解像プロファイルが示され、南極の氷棚上の安定大気境界層内で測定された。モノスタティックの音波レーダー(ソーダ)からの音波プロファイルは境界層内の複雑な構造を示し、係留ゾンデからの風速および温位プロファイルは変化する安定度の対応するバンドを示す。内部波と化石化した対流は後方散乱計測と、局地風と温位勾配に基づく理論的推定との比較の試みを無効にすることを示すが、理想的な条件下では、定性的な一致は観測される。

イントロ:
 大気音波レーダー(ソーダ)は、特に、それに代わる大きなマストやタワーが実現不可能な時に、惑星境界層(PBL)の調査の一般的な方法になった。現在、ソーダシステムはほとんど必ず三軸のドップラーユニットであり、典型的高さ500mまで、鉛直解像度約50mで5分ごとに風速プロファイルを供給する。商業的なものも社内的なシステムも境界層野外観測サイトで見られ、技術的には比較的ささやかな工学的要求を持っている。ますます、ソーダは、空港、発電所、工場、その他の境界層効果に特別な関心のある商業組織において、局地気象システムの一部にもなっている。

本研究は、安定境界層内で操作した時のソーダのエコー強度に現れる細かい構造に焦点をあてる。ソーダは非ドップラーモノスタティックモードで操作され、エコー反響は必然的に180度後方散乱である。音波散乱強度は(それぞれの音波ビームに対する)角度の関数であり、Braggスケール(Batchelor, 1957; Takarskii, 1971)での音波反射指数における可変性に依存することが示されている。純粋な180度後方散乱を考慮することから簡単化が生じ、そして、反射高度は、Braggスケールでの温度構造パラメータCT^2に比例する。それゆえ、ソーダのエコー像は音波長の規模の温度の空間多様性の尺度である。

CT^2は簡単に測定できる量であり、多くの研究が、ソーダプロファイルのサインとその場のCT^2計測の対応を確認している。本論文ののこりでは、レンジと大気吸収とビームの拡散消失を調整したのち、ソーダのサインと温度構造パラメータの間の直線的な比例関係を仮定する。不幸にも、CT^2単独では、大気の平均状態の限られた情報のみしか与えられない。構造パラメタが、効果的に乱流をもつ平均場と繋がる2次のクロージャーを用いた境界層モデルから抽出されるとしても、定量的な散乱の翻訳は、乱流場の尺度から逆転すなわち平均場を必要とする(Neff,1980)。

・・・つづく


Oost,W.A., Jacobs,C.M.J., and van Oort, C.(2000) Stability effects on heat and moisture fluxes at sea, Bound.-Layer Meteorol. 95, 271-302.
タイトル:海洋熱・水フラックスにおける安定度効果

要旨: 1996年のASGAMAGE観測の間、オランダの海岸起きの調査プラットホームにおいて、風速、気温Ta、水温Ts、湿度、運動量・熱・水フラックスが測定された。各物理量について、同時にいくつかの測器を用いた。測定の質の大規模な調査が出来、各調査期間において様々な物理量の最適値が見出された。それらの値から、CHおよびCE、スタントン数とダルトン数が算定され、高度10mの中立状態における値に変換された。この変換において、中立の時と中立でない時のそれぞれで熱と水の粗度長が一致するという仮定を含める場合と含めない場合の効果の解析を別々に行った。この仮定による変換値の相違は測定誤差の内側に収まるということが判った。
 CHについて、データを3つのグループに分類した。(A)安定、(B)θa<θsで不安定、(C)θa>θsで不安定であり、ここでθは潜在温位である。安定データは水温および/または波領域に応じて2つのグループに分かれる。グループBのデータは波齢とかん計が見られた。グループCのデータは、水面直上での水蒸気の凝結を通じて、潜熱から顕熱への変換を示す結果として、一貫してCHに負の値を与えた。熱と水蒸気の効果を結合させて、密度フラックスの項のデータを再解析する試みにおいても、グループCには負の輸送係数が与えられた。
 水蒸気フラックスについて、安定時と不安定時の値の分離というこれまでどおりの結果が得られた。2つの区分ははっきりとした相違であるが、例えば風速との関係などの傾向は見られなかった。標準的なモニン−オブコフ相似則はこれらのデータを説明できないと結論づけた。

イントロ:
 運動量についてのバルク輸送係数つまり抵抗係数CD、顕熱つまりスタントン数CH、潜熱つまりダルトン数CEは次式で定義される。
 τ = −ρ<u'w'>=ρu*^2=ρCD(Uz−Uo)^2
 H/(ρCp)=<θ'w'>=−θ*u*=CH(θz−θo)(Uz−Uo)
 E/(ρLE)=<q'w'> =−q*u*=CE(qz−qo)(Uz−Uo)
(τ,H,E,ρ,U,θ,qの説明など省略)

最近10年の間に、その時点で、それが正しいかどうかの一般的な合意はなかったが(Yelland and Taylor, 1996; Komen et al., 1998)、海上の運動量の研究は、多くはCharnock関係の形式で(Charnock, 1955)、あるいは、波数の逆数の依存性(Maat et al., 1991; Smith et al., 1992)の形で、抵抗係数CDの多くのパラメタ化を供給した。Maat et al.(1991)と同じデータセットの再解析で、波数の逆数の関係(Oost, 1998a)は、両者のパラメタ化がそれぞれの適用範囲を持つことが示された。

この状況と対照的に、CHとCEの値は、大きなばらつきはあるものの、ほとんどの風速範囲においてほとんど定まった値を持つと未だ考えられている(Large and Pond, 1982; Anderson, 1993; DeCosmo et al., 1996; Smith et al., 1995)。いくつかの試みがこの状況を変えるためになされている。多くの熱フラックスデータを供給したHEXOSプロジェクト(Katsaros et al., 1987)は、Ling and Kao(1976)によって予測されたCEとCHへの飛沫の効果を見出すための試みとして始められた。その効果は見出されなかったが、奇妙なことに十分HEXOSはCDの逆波数依存の識別を導いた。Makin(1998)による最近の文献では、包括的なモデルが熱・水(つまり潜熱)の大気−海洋交換のために開発され、CHとCEの両者が安定度と同じように風速の関数だが、その効果は風速が20m/s以上でのみ検出可能であると示された。

これまでのところ、CH・CEと風速との系統的な関係は検出されていない。Large and Pond(1982)は安定状態と不安定状態でSタントン数が異なると記したのみである。

1996年に、オランダ海岸の9キロ沖合いの調査プラットホームであるMeetpost Noordwijk(MPN)およびその近傍においてASGAMAGE観測を行った。HEXOSの野外データをもたらしたのと同じ場所である。ASGAMAGE(Oost and Huebert, 1996; Oost, 1998b)は、一義的には様々な手法によるCO2フラックス観測を目的としたが、渦相関CO2フラックス測定には、水蒸気および熱フラックスが必要であり、それでいわゆるWebb補正(Webb et al., 1980)が適用できる。それによって、本研究の基礎を構成するフラックスの値を得ることができた。データの重要な特徴はカバーする大気安定度の幅である。それは、観測が2つの別々の観測期間から構成されたことによる。フェーズAは春であり、主に安定条件。フェーズBは秋であり、一義的には不安定条件であった。


Brooks,I.M., Soderberg,S., and Tjernstrom,M.(2003) The turbulence structure of the stable atmospheric boundary layer around a coastal headland: aircraft observations and modelling results, Bound.-Layer Meteorol. 107, 531-559.
タイトル:海岸頭状地周辺の安定大気境界層の乱流構造:航空機観測とモデル結果

要旨: 海岸頭状地近傍の安定海洋大気境界層の乱流構造が航空機観測と数値シミュレーションを用いてテストされる。海岸波96観測プロジェクト中の1996年6月7日に北カルフォルニア海岸のメンドチノ岬周辺でNCAR C-130によるフライトから計測が引き出される。速度分散の局地相似スケーリングが連続乱流層中において成功裏に適用される。その経験的なスケーリング関数はいくつかの既存研究で得られたものと似ている。モデルによるスケーリング結果と観測によるスケーリング結果に良い一致が見られる。岬の下流を形成する膨張扇中の領域では、スケーリングの振る舞いには有意な変化が観測されない。これは、このスケーリングが水平均一条件に適用できるが、規格化速度および安定度に関連する関数の詳細な形式が地表面付近で変化することが観測される。この結果、すなわち、本研究で見られるスケーリング関数と他の研究との差、つまり、既存の理論により予測される定数から関数が離れることは、測定された相似関数の性質への疑問を導びく。関数の形式は、風速分散収支への局地的でない寄与によって制御され、研究間の局地的でない項の相違は、観測されるスケーリング関数の相違を説明するとの仮説が立てられた。

イントロ:
 海岸の海洋大気境界層(ABL)は本質的に不均一な環境である。境界層力学が海岸に直接影響を受ける領域は約1ロスビー半径すなわち100kmぐらい沖合いへ拡張する(Overland, 1984)。この領域中では、陸と海の間の表面状態の大きな対比と、海岸地形によって負わされる平均流への束縛が、高度の空間多様性を引き起こし、開洋上の均一ABLで自由に用いられている仮定や簡易化が必ずしも提要できない複雑な環境をもたらす。多くの海岸領域では、より暖かい陸塊から服沖合いへの流れか、または、海岸付近の冷たい湧き上がり水上の海洋空気塊の移流によって、高い頻度で安定状態となる。後者の状態は、大きな大陸陸塊の西岸に沿って広く見られる。

安定境界層は対流性の場合に比べてあまり理解されていない。ある部分は、大規模な計測がなされていないためである。対流状態とは対照的に、安定ABLは未だ単純な長さや時間スケールでは特徴付けられておらず、風速、層状化、放射、乱流の過程および、それら要素についての過去の履歴の関数である(Nappo and Johannson, 1999)。乱流は弱く、時々間欠的で、しばしば重力波を伴う。空間的不均一性は、単一の場所での計測は全ての環境を代表しないことを意味する。表面フラックスのパラメタ化は、特に、陸上の観測からもたらされる結果が大部分検証されていない海洋上では不確かである。結論として、数値モデルは安定条件についてはよく動作しない(Nappo and Bach, 1997)。最近のいくつかの研究は安定条件下でのバルク法で推定されたフラックスと直接測定された表面フラックスの間の著しい食い違いを報告している(Rogers et al., 1998; Edson et al., 2000; Oost et al., 2000)。

海岸水上のルーチン気象観測は稀である。現業ゾンデは島か陸の海岸基地からなされるが、陸の影響によるデータ汚染で悩まされ、数キロ沖合いだとしても代表的な状態であるのは稀だ(Dorman et al.,2000)。合衆国周辺の15〜25キロ沖合いのブイネットワークが表面観測をおこなっているが、ブイは広く撒き散らされ、海岸流れの最も広いメソスケールの形状のみを捉える。沖合いの混合層の乱流、小規模の多様性、鉛直構造の観測は一握りの航空機ベースの野外観測研究に限られる(Brost et al., 1982a, b; Beardsley et al., 1987; Zemba and Friehe, 1987; Enriquez and Friehe, 1995; Brooks and Rogers, 1997)。海岸ABL構造の大規模な計測プロジェクトが1996年夏に北カルフォルニアとオレゴンの沖合いで行われた。海岸波96野外観測プロジェクト(CW96)は海岸境界層の動態とメソスケールでの多様性に関する問題に取り組むべく計画された。11回の調査フライトが国立大気調査センター(NCAR)のC-130ヘラクレスによって、1996年の6月と7月初めになされた。概要はRogers et al.(1998)に示され、結果は大規模な出版シリーズで示されている(Burk et al., 1999; Tjernstrom, 1999; Strom, 1999; Dorman et al., 1999, 2000; Dorman and Winant, 2000; Edwards, 20000; Tjernstrom and Grisogono, 2000; Edwards et al., 2001; Haack et al., 2001; Brooks, 2001; Soderberg and Tjernstrom, 2001)。CW96からの航空機データの解析と関連したモデル研究を劣化させるのは、メソスケール動態と多様性に焦点をあてていることであった。本研究は乱流構造、乱流過程と、境界層の小規模の鉛直構造の風向きに沿った発展を調査し、航空機ベースの観測と3次元数値シミュレーションの両者を利用する。


Kara,A.B., Rochford,R.A., and Hurlburt,H.E.(2002) Air-sea flux estimates and the 1997-1998 ENSO event, Bound.-Layer Meteorol., 103, 439-458.
タイトル:大気−海洋間フラックス推定および1997-1998ENSOイベント

要旨: 風速応力、顕熱、潜熱フラックスのバルク式は、エルニーニュ南方振動(ENSO)に寄与する偏西風の発生のような強いメソスケールのイベントに適しているとして提示される。熱と運動量の交換係数は風速に依存する単純な多項式と大気−海洋温度差の一次式で表される。それらの定式化の精度はTropical Ocean-Global Atmosphere Coupled-Ocean Atmosphere Response Experiment(TOGA COARE, 熱帯海洋広域大気 複合海洋大気応答観測)によって採用された標準的なアルゴリズムを使った大気−海洋フラックス推定に関連して検証される。1990-1999の赤道域と北大平洋域での96個の熱帯大気海洋(Tropical Atmosphere Ocean, TAO)アレイとNational Oceanographic Data Center(NODC)の係留機器からの観測の比較が行われる。バルク式は、TOGA COAREの推定と比べて非常に小さな差の平方の平均の平方根の中央値をもつ。つまり、風応力、顕熱、潜熱について、それぞれ、およそ0.003Nm-2、1.0Wm-2、10.0Wm-2である。
 1997-1998のENSOの間、大気−海洋フラックスと海洋表層の混合層深(mixed layer depth, MLD)の起こりえる関係に加えて、大気−海洋フラックスの変化もまた調査される。1997年のエルニーニョ中の風速応力と潜熱フラックスは、ENSOが最も明瞭に見られた中部太平洋よりも西部太平洋の暖水域で大きいことが判る。これらの差はラニーニャの開始で消滅する。赤道太平洋のMLDは、1998年のラニーニャの開始直前に大気−海洋フラックスと緩やかな相関を示し、他方では相関は示さない。

イントロ:
 以前、能率的かつ計算の容易なバルク式が風速応力、顕熱、潜熱フラックス向けに提示され(Kara et al., 2000a)、Fairall et al.(1996)に述べられたように、TOGA COAREで採用された標準的なアルゴリズムを用いて得られるものと精度において比較可能であることが示された。この比較は、アラビア海における係留ブイからの1994-1995の気象観測(Weller et al., 1998)を用いて行われ、大気−海洋表面における短波および長波放射フラックスが利用可能であった。放射フラックスが利用可能であるため、冷表皮層および暖層効果を考慮することができた。残念ながら、放射フラックスの情報が利用できるのは稀なので(McPhaden, 1995)、後者についてのの温度補正は、多くの天気予報のための現業ブイで大気−海洋フラックスを決定する際に含められない。大気−海洋フラックスは、それでも、それらの補正なしでTOGA COAREアルゴリズムを使って決定することができるが、いくつかの量(風速、湿度、気温、水温、気圧)の同時測定の必要性がしばしば係留記録の長期間にわたる大気−海洋フラックスの欠測をもたらす。これは、1つあるいは数個の必要な量が頻繁にセンサーのミスによって利用可能でなくなるからである。この理由のために、本研究では、冷表皮層および暖層効果なしで、TOGA COAREの見積りをより近く再現するのに調整された大気−海洋フラックスのバルク式の修正版を提示する。

新しいバルク式をエルニーニョとラニーニャの強いメソスケールイベントの間のTOGA COAREフラックスと比較してテストする。エルニーニョ南方振動(ENSO)は熱帯大気と太平洋の海水の強い物理的結びつきの発現である。この結びついた相互作用の間、大気−海洋間の風速応力と熱フラックスは重要な役割を演じ、大気と海洋の間での熱と運動量の交換を引き起こす(e.g. Wun, 2000)。ENSOの間、これらの交換は非常に変化するので、計算される大気−海洋フラックスの精密なパラメタ化は、ENSO現象の記述を探っている数学的に集約された結合大気−海洋大循環モデル(GCMs)にとって貴重だろう。特に、式のテストにおいて、赤道太平洋のブイ観測を使用した。なぜなら、この領域において、ENSOの最大の強度と効果がみられるからである(McPhaden, 1999; Meinen and McOhaden, 2000)。

大気−海洋フラックスが一義的に表面混合層を生成する乱流混合によるとして、大気−海洋フラックスと海洋表面混合層深度(MLD)の考えられる関係を調べる。数値モデルを用いた研究は、ENSOを成立させる物理過程において、しばしば重要な役割を演ずる熱的連続体あるいは表面混合層において、同定される変化をもつため(Y'ukimoto et al., 1996; Perigaud et al., 2000; Cassou and Perigaud, 2000)、MLDは関連している。例えば、熱連続体深さの偏差は上部海洋におけるエルニーニョ暖気イベントの東方伝播のシミュレーションおよび同定にとって重要であると示されている(White and McCreary, 1974; Hurlburt et al., 1976; Zhang and Busalacchi, 1999; White and Cayan, 2000)。そのような関係を探ることは大気−海洋乱流熱交換がENSO中の海面温度(SST)の偏差のための重要なメカニズムである(Weisberg and Wang, 1997)ことによって、さらに動機付けられる。風速応力は混合層における乱流力学的エネルギーの生成に対する第一の貢献者であり、海洋に蓄えられる熱量は風速応力の寄与に最も敏感である(O'Brien and Horsfall, 1995)ため、特に重要である。

第二章では大気−海洋フラックスの修正されたパラメタ化を提示する。第三章では我々の見積もった大気−海洋フラックスと、赤道および北部太平洋に広く分布する多くのブイについて、TOGA COAREアルゴリズムを用いて得られたものとを直接比較する。第四章では、1997-1998ENSOの概要を示し、そのイベント時の定式の挙動を試験する。そして、第五章では、北太平洋および準表面係留観測を用い、1997-1998ENSOイベント時の大気−海洋フラックスとMLDの関係について探求する。最後に第六章で結論を述べる。 つづく


Jacoby-Coaly,S., Campistron,B., Bernard,S., Benech,B., Ardhuin-Girard,F., Dessens,J., Dupont,E., and Carissimo,B.(2002) Turbulent dissipation rate in the boundary layer via UHF wind profiler doppler spectral width measurements, Bound.-Layer Meteorol. 103, 361-389.
タイトル:UHFウインドプロファイラー観測による境界層内の乱流散逸速度

要旨: 本研究は、対流大気境界層内におけるUHFウインドプロファイラーによるスペクトル幅観測から得られた乱流力学的エネルギー散逸速度εの修正および確証に焦点をあてる。境界層研究および観測において最も重要なパラメータのひとつであるεを、ドップラーレーダスペクトル幅観測から推定できる可能性は、多くの先行研究によって確立した確かな理論的基礎がある。しかしながら、このアプローチの主要な弱点は、認識・説明されなければならない様々な非乱流スペクトル幅を広げる気象学的・測定機器的原因にある。本研究のはじめにおいて、εのリトリーブの理論的背景について詳細に述べられ、スペクトルを広げる全ての起こり得る原因を列挙し、評価する。その次に、TRAC-98観測で得られた4日間のUHFによる日中の境界層観測にその手法を適用する。レーダーで得られたεとその場の航空機観測で得られたものの比較から、線形回帰係数およそ0.9の非常に良い一致が得られ、残差バイアスは2×10^-4m2/s3であった。鉛直および天頂以外の観測から得られたεの解析は、風速が通常穏やかな境界層においては、天頂以外から得られたデータが使われるべきであることが導かれた。実際、鉛直のスペクトル幅の測定は、大規模な拡張因子に影響されなくても、地面散乱の除去によって変化し得る。

イントロ:
 長年の間、大気境界層(ABL)は、汚染過程とその観測およびモデル化のよりよい理解に興味を持つ大気科学者に好まれる研究領域であった。日中の対流ABLの調査において、UHFウインドプロファイラーの使用は、過去10年の最も重要な技術的進歩のひとつであると理解された(Ecklund et al., 1998, 1990, 1995; Gage et al., 1994; Carter et al., 1995)。通常、ABLはその深さZiで第一に特徴付けられ、地面での汚染物質の拡散高度に結び付けられる。もうひとつの朝鮮は、小規模の動的なABL内部構造の記述にあり、それは乱流のような輸送過程に依存している。Ziと乱流強度の両者は、風速場と同様に、レーダードップラースペクトルの1/3モーメントの計算から得られる。

実際には、UHFウインドプロファイラーは、スペクトルの1次モーメントから3次元風速成分の鉛直プロファイルを測定するのに主に使用される。Tatarski(1961)は、澄んだ空気中では、レーダーの後方散乱力または、ゼロ次のモーメントが直接小規模の乱流の非均一性、つまり屈折の指標に結び付けられると紹介した。Ottersten(1969)は、次のような、澄んだ空気エコーのレーダー反射率η、大気反射指標構造定数Cn2、レーダー波長λの間の基礎的な関係を導いた。つまり、
 η=0.38λ^(-1/3)Cn2 (

後方散乱力はレーダー波長の半分のスケールでの反射指標の不規則性によって生ずる。強い反射強度は通常、対流ABLをキャップする逆転層で観測される。この特徴は多くの研究で報告されており(White, 1993; Angevine et al., 1994a; Dye et al., 1995; Heo et al., personal communications)、現在では、Ziの現業ABL観測に適用されている。

現在の研究の関心は、乱流のリモートセンシングであり、ドップラースペクトル幅と2次スペクトルモーメントに基づいて、乱流力学エネルギー(KTE)の散逸速度εをより詳細にリトリーブすることである。この技術は一連の理論的研究によって確立され洗練されてきた(Frisch and Clifford, 1974; Gossard and Strauch, 1983; Hocking, 1983, 1985; Doviak and Zrnic, 1984; White, 1997; Gossard et al., 1998; White et al., 1999)。異なる大気過程が解像体積中の光速分布に影響を与え、従って、ドップラースペクトルの形と幅に影響を与える。スペクトルを広げる効果もあるし狭める効果もある。解像体積中の乱流塊の動きの存在は、スペクトルを広げる原因のひとつである。スペクトル幅法を適用するためには、ドップラースペクトル幅の変化の主要な要因を見直し、見積もる必要がある。一旦、スペクトル幅がその他の寄与について補正されたら、乱流情報はεの計算のために抽出されて使用できる。上に列挙した研究の流れの中で、εの計測がなされ、実際の直接データと比較されたものはほとんどなく、スペクトル幅法の信頼性は証明されるために残っている。

ABL中のUHFウインドプロファイラーによってなされたスペクトル幅計測からリトリーブされるεの調査が本研究の第一の目的である。本研究のはじめて、εのリトリーブの理論的背景が詳細に述べられ、スペクトルを広げる全ての起こり得る原因を列挙し、評価する。その次に、4日間のUHFによる日中のABL観測にその手法を適用する。ここでは、同時にレーダーのデータとその場の航空機乱流観測のデータが利用可能である。鉛直および天頂以外の観測から得られたεは、独立に考慮され、議論される。本手法の妥当性がその場の航空機乱流観測に対して調査される。


Andreas,E.L. and Decosmo,J.(2002) The signature of sea spray in the HEXOS turbulent heat flux data, Bound.-Layer Meteorol. 103, 303-333.
タイトル:HEXOS乱熱フラックスデータにおける海飛沫の兆候

要旨: 大気−海洋間の熱・水輸送における海飛沫の役割が理解されず残されている。海飛沫が風速10〜25m/s程度では、大気−海洋間の乱流熱フラックスに影響しないという研究もいくつかあるが、風速12m/s程度と小さい時にの飛沫の寄与の重要性について報告されている。HEXOS(Humidity EXchange Over the Sea, 海上水蒸気交換)プロジェクトの目的のひとつは、大気−海洋間の乱流熱フラックスに対する飛沫寄与の定量化であった、しかし、HEXOSのフラックスデータの最初の解析において、飛沫のシグナルは非常に小さく、データ中のバラツキの中で信頼をもって識別できるほどではなかった。我々は、TOGA-COAREバルクフラックスアルゴリズムおよび高度の微物理飛沫モデルの文脈において、HEXOSデータを再度見た。この良質なデータと最新式のモデルの組み合わせは、事実上全ての風速15m/s以上のHEXOS乱流熱フラックスデータ中の明瞭な飛沫のシグナルを明らかにする。飛沫効果は潜熱フラックスデータ中でもっとも明白であり、風速10m/sの乱流フラックスのおよそ10%に寄与し、風速15-18m/sでは10-40%である。顕熱フラックスへの飛沫の寄与もまた、風速15m/s以上で少なくとも10%である。それらの結果、大気−海洋間の乱流熱フラックスについての新しい統合されたパラメタ化が導かれる。それは、海が大気と熱・水を交換する界面源と飛沫源の両方を認めるので、特に風速が大きい場合に便利である。

イントロ:
 50年間の調査と考察にもかかわらず、海飛沫が大気−海洋間の熱・水輸送になんらかの役割を果たしているかどうかという問題には、議論の余地のない答えがなかった。例えば、モデルと風速12m/s以下の10m/s程度での開海面上の観測の結合において、Ling(1993)は飛沫の水滴が「大気水蒸気と潜熱の主要な供給源」であると述べている。しかし、Makin(1998)はモデル結果から「風速18m/s以下では、熱・水フラックスにおける飛沫の劇的な影響はない」と結論づけている。更に彼は「海飛沫の効果が風速25m/s以上で有意になる」とモデルが示唆したと続けた。

このような様々な意見がこの分野においてかなり一般的である。Hasse(1992)は3つの異なる論拠を使っている。エネルギー保存の束縛、飛沫水滴の全表面積、海塩粒子によって示唆される蒸発。それらによって簡単な飛沫の効果の推定を行い、「ハリケーンのような風速を除けば」表面蒸発への飛沫の寄与は無視できる程度であると結論づけている。Andreas(1994a)は、しかしながら、Hasseの論拠の弱点を議論し、絶対的な飛沫の役割の証拠を報告せずに、「そんなに簡単に、大気−海洋熱・水輸送の重要なエージェントとしての海飛沫を却下できない」と結論づけている。

Andreas(1992)の飛沫モデルは、飛沫の顕熱・潜熱フラックスが、風速15-20m/sの通常の界面あるいは乱流熱フラックスの10-15%でありうるとし、もうひとつのやりとりを引き起こした。Katsaros and de Leeuw(1994)は、Andreasのいくつかの選択と仮定に問題を提起し、HEXOSの結果を無視していることを非難した。HEXOSの結果は、その時点では予備的形式で入手可能であったが、査読付雑誌では公開されていなかった(i.e., DeCosmo et al.,1996)。事実、HEXOS熱フラックスデータは、風速10m/sから18m/sにおいて、顕熱・潜熱輸送係数に劇的な増加を示さず(Katsaros and de Leeuw, 1994; DeCosmo et al., 1996; Smith et al., 1996)、Bortkovskii(1987)の図-3.10がこの飛沫論争を引き起こして以来、多くの科学者が予期していたとおりであった。

Katsaros and de Leeuw(1994)への返答において、Andreas(1994b)は、一般的にモデルはHEXOSの結果と互換性があるが、HEXOS熱フラックスデータに対して一点一点モデルをテストするよう提案した。本研究では、Andreas(1992)の飛沫モデルによって、DeCosmo(1991)のHEXOSフラックスデータを一点一点再解析した。

我々の目的は2つある。ひとつは、Andreas(1992)の飛沫モデルがHEXOSデータと互換性があるかどうかを理解すること。本当にKatrsaros and de Leeuw(1994)が強く主張するものよりも非常イン大きい飛沫フラックスが予測されるのかどうか?この点を評価するため、Andreas飛沫モデルに、最新の表面フラックスモデル、すなわちFairall et al(1996b)のCOAREアルゴリズムから得られるフラックスの界面成分の推定を結合させる。HEXOS顕熱・潜熱フラックスデータのラン毎のシミュレーションにおいて、モデル計算された飛沫フラックスを含めることによって、Fairall et al. or Zeng et al.(1998)の界面フラックスのみよりもより精度よくHEXOS観測が再現された。すなわち、Andreasモデルにおいて示されるとき、HEXOS顕熱・潜熱フラックスデータの中の個別の飛沫の兆候があった。

この結果、第二の目的へと導かれた。HEXOSデータとAndreas(1992)飛沫モデルを用いて、大気−海洋フラックスを界面フラックスと飛沫フラックスに分離する方法がわかった。本解析によって、大気−海洋かんの顕熱・潜熱フラックスの新しい定式化が実現し、風速が通常15m/s以上において、バルク法よりも良い概算が可能となった。


Hiro-Ki